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同じ家に住んでいる伯父が殺されかけたというのに、二十歳にもなった娘の発する言葉とは思えない。
「質問に答えて頂けませんか?」
「先に私の質問に答えて」
「お止めなさい。
申し訳ありません、我儘な娘で」
母親の叱咤など気にもせず、視線は隼人の髪に向いている。
常識のない人間に勝つのは難しい。
隼人は白旗を挙げざるを得なかった。
「地毛ですよ」
映子の目が、驚きに見開かれた。
「貴方、異人さんなの?」
両親の慌てる姿など意に介さず、映子は興味を隠さない。
大きな目も、少子丸みを帯びた顔も、年齢よりも若く見える。
生成り地の大人しい柄の着物を着ているが、芙蓉を象った華やかな髪飾り、紅をひいた赤い唇。
軽々しい性格が、外見に現れている。
「質問に答えて下さい」
「勿論寝ていたわよ、一人で」
そう言って、含み笑いをした。
「誰も証明できないに等しいですな」
「それが普通でしょうね、この時間なら。
ところで、奥様は昨日、義礼氏の奥様とお会いになられましたか?」
「いいえ、その、私達あまり、顔を合わせることはありませんの」
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