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四人を訪ね終えたのは、夕刻だった。
怪しむべき態度を表した者はいなかった。
現場不在証明に関しては、高林家と同じで、あるようで無い。
最後の一人、有朋の情報を元に、その人物の自宅に向かう。
「今までは仕事上のいざこざがあったらしいとわかる相手ばかりだったけど、山科とはどういう関係だろう」
隼人も、山科は知っていた。資産家で、悪い噂の多さは、日本中で十本の指に入るのではないだろうか。
三流紙の常連である。
「さて、どうやって乗り込もうか。今までの方法は使えない」
山科邸の周りを彷徨いていると、頭に何かが当たった。
足元を見ると、そら豆大の紙屑が落ちている。拾い上げ、飛んで来たらしい方向を見上げる。
山科邸の二階、角部屋の窓が開いており、おかっぱ頭の子供が確認できた。
紙を広げる。乱れた文字で『help me』と書かれている。
隼人は万年筆と手帳を出し、どうしたのかと、英國語で書くと、小石に包んで、投げ返した。
直ぐに帰って来た返事には、監禁されている。という、物騒な言葉が。
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