93人が本棚に入れています
本棚に追加
明治の時代に流行った、派手でクラシカルな洋館である。
シャンデリアやら彫刻、施しが過ぎて、主の趣味の悪さを物語っているようだ。
玄関近くの部屋に通される。
赤い絨毯に、ゴブラン織りのソファ。全くもって落ち着かない。
ソファに体を沈めているのが、山科だった。
仕事もせず、道楽だけで日々を過ごしているにしては、引き締まった体をしていた。
「お前が脅迫者か」
珈琲を口に近づけながら、山科は、馬鹿にしたような口調で言う。
「脅迫? 俺が脅迫をしていると言うなら、警察に行きますか? 一緒に」
ギロリ。と、山科は睨んだ。
唇の左端が、紫色に腫れている。
切れてもいるらしい。
熱い珈琲なら滲みただろうが、飲んでいるのは、冷やし珈琲だった。
「その傷、いつできたものです?」
入り口の前で立ったまま隼人は問うが、山科は答えず、視線を逸らす。
「誰に殴られたのです?」
黙っていても、山科が不快に思っているだろうことは、伝わってくる。
「それでは、二階に監禁している女の子の話をしましょうか。あの子は誰なんです?
まさか、自分の娘だとは言いませんよね」
最初のコメントを投稿しよう!