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ーー次のニュースです。
東京都内の井戸で3体の遺体が発見された事件で、警察等の調べによると遺体の1番下にあったものは容疑者の舌である可能性が高いとのことです。
あれから1ヶ月が経った。
もうすぐ退院できそうらしいが、まだまだあの時の怖さは抜けない。
私の手首は切断されてから救急隊の助けが来るまでの時間が短かったおかげで、手術で再び取り戻すことができた。
最初にわたしに助けてやる、と言った人はどこにいるのだろう。
今日はちょうど警察の人が聞き取りに来る。
退院したらその人に、お礼を言いに行こう。
*
「無事、接着できて本当に良かったです。」
「はい。助けて頂いた救急隊の方のおかげです。あともう一人…」
「もう1人ですか、?」
「わたしに助けてやる! と言ってくれた方がいたんです。意識がぼんやりしていて、視界もはっきりしていなくて分からなかったんですが、その方は今どこにいるのか教えて頂けませんか? お礼が言いたくて…」
若い刑事は少し驚いた顔をして、黙り込む。
「そうですか……なるべく刺激を与えないようにと上からも言われているのですが、じきに分かることです。はっきりとお伝えしなければなりません。」
「はい。」
「きっとあなたはパニックを起こされていたんだと思います。井戸の中にはいくつもの死体があるせいで、自分もこうなってしまうのではないかという気持ちから救急隊ではない他の誰かが助けに来たと思っていたんですね。」
「はい?」
「まだこれはメディアには出していない情報ですが、時期にニュースであなたも知ることになるので先に伝えておきます。
あなたは聞き取り捜査で井戸に放り込まれた初めの方、男2人が言い争っていた、と言いましたよね。また、今は助けに来てくれた人がいた、と。しかしあの場には、3体の死体以外には犯人とあなたしかいませんでした。」
息が詰まる音がした。
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