六根清浄

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六根清浄

ドサッ。 今週もまた、それは俺の上に積まれていった。 『なぁ、重いんだ…あとどのくらい積まれるんだ?おいおい、そんな叫んでも周りには聞こえねぇよ。ここは暗くて、寒くて、狭くて、怖いよなぁ。俺も同じだ。』 「うるせぇなぁ。叫ぶんじゃねぇよ、おい。今度の人形は若いやつだぞ。お前、若い女が好きだろ?」 『おいおい、そこのお姉ちゃん。叫ぶのをやめろ。俺も最初はそうやって叫んでいたから叫びたい気持ちはよく分かる。俺のときは、ここには誰も居なくてな。 だから、これからどうなるのか分からなくて不安で不安でたまらなくてよ…それからは食べ物も、飲み物も何も与えて貰えないものだから見ての通り、俺は人形になったんだ。分かるか? 俺は舌を。この上の他の子達は、耳と目と鼻を取られた。』 「コイツは手だ。あと、あと幾つだ。1…2…3…4…。コイツで5だからあとひとつだな。おい、!うるせぇいい加減に黙れ!!」 ** ここは井戸だ。 わたしは井戸に放り込まれた。 真上で争っている声が聞こえる。 痛い痛い痛い痛い。手首を切られた。 あれほどの出血を初めて見た。 痛すぎてもう痛みを感じなくなってきた。 あーあ。男の人に、ノコノコと着いていくんじゃなかったなぁ。 わたしは大人だ。 そう思ってたけど、まだ年は17歳のちゃんと子供で世の中の怖さを知らなかっただけだったんだ。 箱入り娘、ってやつだったのかな…… 反抗して彼氏を作ろうと思って、マッチングアプリなんてするんじゃなかった。 もう叫ぶのも疲れた。 上で聞こえる言い争いは犯人達なのだろう。 出血のせいか、だんだんと視界はぼんやりとなってきた。 このまま出血多量でわたし死んじゃうのかな? ママとパパ、悲しませちゃうなぁ。 ママの美味しいご飯もう一度食べたかったな… ごめんね。 ** 《……おい!! お前! 分かるか!? 俺が見えるか??? 今助けてやるからなぁ! ちゃんと生きているんだぞ! もう犯人いないからなぁ!!》 意識が混濁する中で、なにかが聞こえてくる。 上を見ても、はっきりとはもう見えない。 だから今の声を発した人は誰かわからない。 けれど、さっき真上で聞こえていた言い争いはもう耳には入ってこない。 助ける、とか言っていた気がする。 あぁ、助けて欲しい…… 家に帰ったらとびきり怒られる。 だけど、ママの手料理が食べれるならそれでいいや。 また上が騒がしい。 寒いよ。たすけて。 おい、ここだ!!!ここにいるぞ!! 救急隊、準備出来たか! 今、助ける。と言っていた声と違う声がする。 大丈夫なのかな? 通報してくれたのかな。 今度お礼を言わなきゃ。 その瞬間、わたしは眩しい光を当てられた。
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