1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういう時って大抵トカゲさんありますよね。」
わたしはおそるおそるよそ向く彼の目と目を合わせようとした。
「なんのことやら。」
トカゲさんはくるっと回ると足早に歩き始めた。わたしは彼の急に変わった歩幅に合わせようとこけてしまいそうで、呼吸と話す言葉がかみ合わないながらも、
「わたし、年下で頼りないかもしれない、ですけど、話し相手にはなると思いますっ。」
「頼りないって思ったことなんて、一度もないよ。」
その割にはトカゲさんの歩む速度が上がった。
「じゃあ、話してくれたっていいじゃないですか。」
「話したところでどうにもならん。」
「そんなの話してみないとわからないですって。」
「しつこいな君は。」
「話してくれないと地の果てまで追いかけますよ。」
「それは勘弁。」
「はきますか。」
「君は刑事か。」
「ただのFJKです。」
「『F』ってなに。」
「あ…」
「なんだよその憐む目は。」
彼はやっと立ち止まった。わたしは膝に手をついて、
「やっと休める…。」
最初のコメントを投稿しよう!