第一話「逆鱗」

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電車がやってくる方向の線路を覗いていると二つの眩い光の塊が迫ってきて、パリッとしたスカートを翻した。慌てて抑えると電車のドアが開いて、わたしは表情を固めたまま隅っこの座席に座った。膝に乗せた鞄から筆箱を出してボールペンを一本、それからスカートのポケットから生徒手帳を引っこ抜いた。校歌だの校則だの書かれたページをめくっては飛ばすと、乱雑な文字の軍団が現れた。その文字列をじっくり読み返してはわたしは頬を緩め、新しいページにたどり着くと黒いインクで書き殴った。一息ついて車窓に目を向けると、闇の中にぽつぽつと明かりが灯っているのが入り、なぜかわたしの頭の中でプラチナの指環がぐるぐると回り出した。しかも電車のスピードが明らかに遅くなったのを体で感じて、わたしは二重にため息をついた。案の定、わたしの降りる駅の名前がアナウンスされて、わたしは重い体を立ち上がらせた。
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