第一話「逆鱗」

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「お手に取っていただきありがとう。」  ふりむけば、くまをかった目と合った。  「トカゲさんっ」  「なんかぎこちないね。」  首をかしげる彼からわたしは視線をそらしながら、  「そんなことないですよ。」  「へぇ」  「…レジ行ってきます。」  わたしは足早に彼の横を通り過ぎた。  『ありがとうございましたー。』  自動ドアを無事出ると、彼は外にあったCDの棚にうなっていた。わたしは笑いをこらえつつ、  「お待たせしました、何探してるんです?」  彼は答えた。  「特に、何も。」  わたしは軽くこけた。ふふっと彼は微笑した。  「行こうか。」  「え、あっはい。」  彼のくれた眼差しに頑張って合わせてはいたものの、わたしは頭の隅で湧いた(よこしま)な疑問は悟られないようにした。  
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