第一話「逆鱗」

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 「ごめんっ。」  杏の声にはっとした途端、わたしの視界は被さった何かで遮られた。  「エプロンは投げるものではない。」  「つい投げちゃった、えへっ。」  「かわいくないぞ。」  そんな会話を聞きながら、わたしは頭からエプロンを引き上げると、するすると装着しながら、なぜかうなだれている杏と目が合ってしまった。目をそらそうとしたが時すでに遅く、  「くーるーみぃ。」  わたしはしょうがなく、  「な、なんだよ。」  「トカゲがあたしのこと『かわいくない』って言ったぁああ」  「あっそう。」ところでトカゲさん、とわたしは台所へ向かった。後ろで薄情者と罵る声が聞こえた気がしたが、わたしはふりむこうとは1ミリも思わなかった。
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