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「ごめんっ。」
杏の声にはっとした途端、わたしの視界は被さった何かで遮られた。
「エプロンは投げるものではない。」
「つい投げちゃった、えへっ。」
「かわいくないぞ。」
そんな会話を聞きながら、わたしは頭からエプロンを引き上げると、するすると装着しながら、なぜかうなだれている杏と目が合ってしまった。目をそらそうとしたが時すでに遅く、
「くーるーみぃ。」
わたしはしょうがなく、
「な、なんだよ。」
「トカゲがあたしのこと『かわいくない』って言ったぁああ」
「あっそう。」ところでトカゲさん、とわたしは台所へ向かった。後ろで薄情者と罵る声が聞こえた気がしたが、わたしはふりむこうとは1ミリも思わなかった。
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