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少年は答えられなかった。
「君はコピーで人類の敵だ。でも、そのコピーは劣化コピーではない。むしろチューニングしてコピーしている。ここで……自分が偽物だという考えに至ったかも知れない他の人類の敵が、なぜ本物の自分を探さなかったかの答えがある。快適だからだ」
付け加えるなら、そう先生は言った。
「人類の敵とは何か。それは強化されてしまった人類そのものだ。つまり……進化した人類だ」
いや絶対宇宙人とその手先では???
少年は先生の言葉を逐一信じてきたが、ここだけはどうしても疑いが強かった。
現代の技術で脳をチューニングするだのコピーするだの、ありえない。
「だとすれば……先生、人類の敵っていうのは人類であって人類ではない?」
「いや、君らも人類だ。子をなせるかは分からんがな。やってみるか?」
「ってことは、できないんですね?」
「キミはコピー品でもつまらん反応をするなぁ……」
ふう、と先生は肩を落として肉じゃがの鍋の中を見る。蓋を戻して火を止めた。
「どうしても行くと言うなら、アタシは止めない。でも、日が変わるまでに帰ってくるんだ。いいね?」
少年は黙って頷いた。
筑前煮も肉じゃがもよく味が染みていた。先生との食卓を10分で片付け、出かけることにする。少年は確かめずにはいられなかった。自分の推理、そして自分の正体。
「行くならアタシの服着て行き給え。君の制服は君の血が落ちそうにない」
とはいえ先生が着る服はどれも男が着ても問題なさそうだが。そこの奥にあるチャイナドレス以外は。
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