魔王城の主

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「そうか。引き続き時間を超える研究を続けておいてくれ」  少年にとってはよくわからない体験だったが、確かに時間を僅かに遡っていたことは理解した。目的とは違ったが、ここには超技術と呼べる物が実在する。それが分かれば十分だ。 「そうだ。貴重な体験をさせてもらったんだ。飴をやろう」  先生の部屋のロリポップをくすねてきたのが役に立った。全く手癖の悪い少年だ。 「不要だ……」 「そう言うなよ」  少年はゴスロリ少女の前まで歩み寄り、顎を掴んだ。親指で少女の唇をなぞると、観念したのか少女はおずおずと口を開いた。  歯に当てないようロリポップをゆっくり挿入する。ロリポップは少女の唾液に溺れ、ヌルヌルと舌の上を這いまわる。舌の動きに合わせて少年はロリポップを前後に動かし、少女に口内の甘味の存在を意識させる。  飴は緑色に変わっていた。 「……また来るわ。じゃな」 「我はいつでもここに居る……」  表情が枯れていたゴスロリ少女がうっすらと笑みを浮かべていたのを見て、少年も笑みをこぼしてしまった。  外へ出て南京錠を閉める。ん? あいつ閉じ込められてるのでは?  他の出入り口から出入りできるのだろう。深く追求したらおかしくなりそうだ。  少年は残りの二箇所を残して帰路についた。  星がきれいだった。殆どの星座も星の名前も分からないが、サソリに追われた英雄がこの季節に現れることだけは知っていた。  英雄は悠然と輝いている。この空のどこかに少年を偽物にした張本人がいる。きっとあの英雄は知っている。そう思いながら走るうちに先生の家まで帰ってきた。   出迎えてくれた先生も、家の中も暖かかった。 「寒すぎて泣くかも知れません」 「だろうと思って風呂沸かしておいたぞ。ふふん、デキる女だろう?」 「看護師資格持ってて生物の教師もできる先生がデキない女なわけないじゃないですか」  誇らしげな先生を横目に服を脱ぐ。シャツのボタンがいつもと逆で上手く外せない。着るときももたついていたのを見ていた先生は少年の後ろに回った。 「意外と不器用だな君は」  先生は少年を抱えるように1つずつボタンを外していく。 「デキる女だろう?」  耳元でしっとりと囁く先生はいつもより艶やかだった。その行為に何もできないでいる少年は全てのボタンを外されシャツを脱がされ、先生のなすがままだった。先生は冷えきった少年の体を温めるというのは建前で、体のあちこちに手を伸ばした。 「次は酔ってない時にしてくださいね。アルコールの力に頼らなくてもできるならの話ですが」 「やっぱりかわいくないなあ君は」  パッと離れた先生はリビングに戻って行った。先生の悪ふざけに付き合ってもいいが、溺れてしまいそうになるのが怖かった。
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