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少年はふと、生徒会長のことを思い出していた。あれから2日経った。殺されかけたとはいえ、日常を共にした仲だ。殺そうとしたのも何か理由があるはずだ。
先生と協力関係にあるのは間違いなさそうだが、生徒会長が何を考えてるのか読めない。下手に接触すればまた殺されるかも知れない。殺されるのは構わないが何も知らずに終わるのは嫌だ。
「少年」
風呂場のドアの向こう側から先生の声がする。水音に紛れつつも返事をした。
「君は、コピーになってどんな気持ちだ?」
「別に……何も変わらないですね。むしろパッシブスキルを任意のタイミングで出せるようになったってのが好都合って感じですよ」
「ほう……意外と冷静だな。最初はかなり困惑していたというのに」
「今日確信したんですよ。この世に存在する超技術ってやつを」
「コピー機でも見つけたか?」
「いいえ、時間遡行装置でした」
「……すぐ上がってこい。詳しく聞きたい」
先生は聞いたことのない荒い口調で命令するとその場から去っていった。
少年は大きな水音を立てながら風呂を出た。鏡の前で少し自分を見てから水を弾く肌をタオルで拭き、先生の用意した先生の服を着る。あの一件を言うのはまずかったか。魔城の主もコピーだった。
「座り給え」
先生と向かい合わせに座る。テーブルには一枚の紙とペンが並んで置いてある。
「オレから聞いてもいいですか?」
「いいだろう」
先生は余裕のある素振りで言う。わざとらしく咳払いしてから、少年は1つの疑問をぶつけた。
「先生は……先生の属する集団は、コピー人間全てを把握しているわけではないのですね?」
「それはそうだ。あのロリポップがなければ普通は分からん。君が例外なだけだ」
「…………オレからは以上です」
「では改めて……時間遡行装置とはなんだ?」
「文字通り、タイムマシンです」
「どこにあった?」
「大学の地下です」
「タイムマシンで君が入れ替わる所を見たか?」
「いえ、どうやらタイムマシンのスペックが足りないらしく30秒程しか遡れないようでした」
「未来には行けないのか?」
「行けないようでした」
「誰が作ったか分かるか?」
「いえ……」
「そう……か……」
先生はそれらの質問を聞いてひとまず納得したらしい。続いて紙に何やら書き始めた。
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