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未来人と宇宙人
そもそも、だ。オリジナルとそっくりのコピーを作って記憶も人格もある程度復元できるなど、現代の人間ができるわけがない。
「未来人か宇宙人辺りか?」
未来人の超技術(仮)を使って複製人間をバラ撒く。仮にできたとして、それが一体何の意味を持つのか……。過去を変えたとして未来人にとっていい影響になるとは限らないし、その過去があったからこその未来になるのだから堂々巡りになるのではなかろうか。
宇宙人の超技術(仮)を使って複製人間をバラ撒く。複製人間はやがて全ての人類に成り代わった。…………で、宇宙人が地球に来て明け渡せと言う。その複製人間と宇宙人が戦争しそうだな? まあしかし何か自殺トリガーのようなものとか複製人間にしか効かないような薬剤撒いて全滅させるとか、浄化するための色々手段はあるな。
可能性としては宇宙人の方が高そうだ。
少年は成り代わり人類を宇宙人の仕業と考えて今後の活動を決めることとした。
楽々コピーすることができるなら、オリジナルは劣化しない形で保存されている可能性がある。地球上のあらゆる植物の種子を保存する機関があるように、地球上のあらゆる人間を保存する宇宙人が居てもおかしくない。
逆にいつでもデータ取れるなら、大事な部分だけ取ってあとは捨てるってこともあり得る。
オリジナルが標本になっていると考えては元も子もない。今は保存されているって方向で考えておくことにしよう。
成り代わりがいつかを考える。成り代わりが複数例あるとすると白昼堂々やっているのは考え難い。目立たない場所で目立たない時間に抵抗されることもなく行われる必要がある。
「やはり寝ている間に拉致して交換、が現実的か。家はマンションの4階だし、オレをどうにかして運ぶってのもハードルが高い。すると転送装置みたいなシロモノがあるはずだ」
家の中に監視カメラでも置いてあれば手口が分かるんだがな。と呟いて、少年の心は池に落ちた斧のように沈んで行った。
転送装置なんて使われたら手掛かりなど見つかるわけがない。
「ダメ元で聞いてみるか……」
メッセージを流して2分後、早速着信がある。
『おにいちゃんさぁ、転送装置を使って転送するために必要な物を考えた? ただ転送することはできないでしょ?』
女神は意外にも近くにいた。
『完全に理解したわ』
『おにいちゃんはやくかえってきてよ。ポテチ食べるとおねえちゃんたち怒るの』
『たまにはちゃんとした飯食えよ』
『やだー』
『そんなんじゃ大きくならないぞ』
『彩愛おねえちゃんは大きいけど真理愛おねえちゃんは』
『それ以上はいけない』
スタンプで濁して会話を断つと、再び少年の頭は回りだす。転送装置を使うためには恐らく大量の電力が必要だ。そして転送元と転送先の座標を設定する必要がある。
転送元の座標を正確に知るためには部屋の構造を知っている必要がある。
「オレの部屋に入ったことがあるやつが怪しい、ってことか」
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