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入ったことがあるやつは生徒会長とその妹、オレの妹…………他に居ない。多分。友達は少ない。
生徒会長は間違いなく違う。もしそうならあなた誰よとは言わないはずだ。
オレの妹も違う。敵対勢力なら転送装置に関するヒントを与えるとは考え難い。
生徒会長の妹も違う。そもそも誰かが宇宙人という話になる。
ゴールを置き間違えたか。別の角度から攻めることにした。転送装置を使用するにあたり、巨大な電力を使うと予想される。とすると、家庭用電源ではなく、大規模に電力を使える、使ってもバレない、装置を置くスペースがある、そんな施設が必要だ。
ある。この近くにある。
茗渓大学だ。
少年の心はトンネルを抜けた。
航空写真と構内図を見ながら装置の場所を絞り込む。配電盤から直接電気を引けそうな場所、空きスペースになってる場所、人目につかない場所、次々ピックアップして5つに絞り込んだ。
高エネルギー実験棟、宇宙航空学研究棟、配線用地下通路、スポーツスタジアム、中央管理棟の5つだ。
「少しは回復したか? 少年」
不意に肩を叩かれて、ふえぁっ!? などというあまりにも珍妙な叫びを上げたものだから、先生は固まって目の焦点がどこかに行ってしまった。余程驚いたのか、買い物袋の中身が足元で雪崩となった。
3秒ほどの後、玉ねぎを拾い上げた少年は平謝りしながら先生に手渡した。先生は少年の頭をくしゃくしゃにしてから、
「驚かせて済まない。アタシに気付かないとは思わなかったものでな」
「いや、その……大丈夫です」
大丈夫ですとしか言えない自分が少し情けなかったが、気付いたことがある。今の自分が紛れもなく劣化コピーだということだ。
この時に少年は自分が自分でないことを悟った。当たり前過ぎて見過ごしていたが、オリジナルが持つ特殊能力が劣化している。オリジナルの自分はいつもそれに苛まれてきた。そして、気付きたくないことに2つも気付いてしまった。
特殊能力が劣化しているとこんなにも快適なのだと。
自分が劣化コピーだと。
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