初めてのパパ活

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 ――― パパ活始めよ思てんねん。  都内の総合商社に新卒同期で入社してからかれこれ20年以上。長い付き合いになる大野が呟くようにそう言った。わたしはずるずるとすすり上げていたラーメンをたぐる箸を止めて、そのまま上目遣いに、目の前に座る大野を見た。  特段、ご乱心の様子ではない。普段から変人と言えば変人だけれど、その変人さ具合はそうは言っても常識の範囲内の変人具合であって。でもそもそも常識の範囲内の変人という言葉自体が矛盾をはらんでいるわけだから、それは常識人なのか変人なのか、という問題は生じる訳だけれども、まあ要は昼飯時にラーメンをすすりながら「パパ活始めようと思っている」なんていうカミングアウト(?)をするほどの変人だとは思っていなかった。  ここはどう返すべきか、と逡巡した後、わたしはストレートに行くことにする。 「パパ活とは、あの、お金と性欲を持て余しているけれども風俗に行くほど自分は困っていないぞと自負しているおじさんが、恋愛とか若者への支援とか言うきれいごとを隠れ蓑にあわよくば風俗よりもお洒落に性欲を満たそうとして行う、あのパパ活?」
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