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考え深げにラーメンをすする大野を、今度は真正面から見据える。40代。年齢よりは若く見えるし、清潔感もあるが、それでもやっぱりそれなりの歳に見えるようにはなってきた。新卒で入社してから一緒の部署になったり別々になったり、それでもそこそこ頻繁に顔を合わせていたから、大野が歳をとって行っていることに気が付かなかったけれど、例えば目の下のクマとかくすんだ肌とかにやっぱり歳月はそれなりの爪痕を残している。それはもちろん、わたし自身だってそうだろう。
「そんで、なんでそのパパ活を始めようと思ったのよ?」
本当に知りたいのかは自分でも確信がなかったけれど、まあ話の流れで聞いてみる。
「それな。よう聞いてくれたわ」
大野が目を輝かせる。上京して20年以上たつのに全く東京弁に迎合しようとしない見事な関西弁だ。
「あんな、俺、離婚したやん」
「したねえ。大野って別にそんな悪い配偶者って感じでもなかったのにね。大酒喰らう訳でも無く、浮気する甲斐性もなく」
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