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ここは迷わず一刀両断だ。人が生きていくのに愛が必要、というのは否定しない。実際には愛なんてなくても幸せに生きている人は沢山いる。なので、酸素や栄養と違って必要不可欠という訳でも無い。でもどこか夢見がちでお人好しで、人の善意を信じて疑わない大野のような人間には、確かに愛は必要なものに思えた。それにしても。
「愛が足りないから補充したい、というところまでは分かったよ。ただ、それを探す場所が間違ってる。愛は、絶対に」
絶対に、に思いっきり力を籠める。
「パパ活では見つからない」
「そうかなあ」
大野は殊更にのんびりと言って、ゆっくりとグラスに入った水を飲んだ。会社の近くにあるこのラーメン屋は、一時期雑誌に掲載されたりもして大層な人気だった。けれども早くもブームは過ぎ去り、今やラーメンを食べ終わってお冷やを飲みながら一息ついても嫌な顔をされることはない。盛者必衰の理、だ。ラーメン屋だって、人間だって、いつかは衰えていく。せめて我々は売り上げに貢献しようと、わたしたちは週に一回はこの店を訪れる。
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