10人が本棚に入れています
本棚に追加
その翌日から、朝のジョギングで、上杉を見かけなくなった。季節は秋から冬に変わるところだったから、もしかして寒さが苦手なのかなとのんきなことを考えていた。
だけど、その状態が3週間以上も続くと、落ち着かなくなる。もしかしてあいつは外部受験するのかな。追い込みをかけるため、ジョギングはやめたのかも。
それでも桜並木や自販機には毎日行ってしまう。未練がましいたらない。
学校でも上杉を見かけなくなった。きっと来てはいるんだろうけど、クラスは別の棟にあるから、あまり会えない。せめて元気にしているのか知りたかったけど、共通の知り合いなんていないし、誰にも聞けない。
こんなものか。
うん。きっとこんなものだ。
もともと縁なんてなかったし。道家が心配するようなことは何も無かったんだ。
白い息を吐きながら、少し笑った。
走る楽しさは何も変わっていない。アイツに会えなくなってもそれは消えない。そう思おうとした。したのに。
今は枯れ木となっている桜の下で足を止めた。今でもたやすく思い出せる。ここの土手で、上杉が寝転がっていたのを。そして泣いていたのを。
あの時、あいつの体に降り積もっていた桜の花びらのように、俺のあいつへの想いも降り積もっていたのだろうか。
俺自身も知らない間に。
泣きはしない。泣きはしないけど、とてつもなく寂しくなった。
最初のコメントを投稿しよう!