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「私は団塊Jrと呼ばれる世代なんだ。悪魔さんは知らんでしょうがこの国の未来の人口、つまり国力を担う世代だったんだ。他の世代に比べとにかく人数が多くて、幼い頃から何でも競争競争だった。詰め込み教育全盛でね、受験戦争は熾烈を極めていて半数は合格できない時代だった。受験生と言ったが進学を望まない人も3割は居てね、それをしてさらに何校も併願して半分程度しか進学できなかったんだ。倍率で言えば数十倍が当然だった」
要するにこの男の世代はそこだけ特異に人数が多かった故人生を掛けた過酷な戦いを余儀なくされたと言う訳だ。そんな闘いの日々に男は疲れたと言うのだろうか。だが特に感情も乗らず続く話の先は予想外だった。
男が大学に入る前この国は世界も驚く好景気に沸き、湯水のごとく金がばら撒かれる狂気の時代だったが、卒業に合せるかの様に景気が凍り付いた。これはこの国の政府と大本の銀行が行った政策が大失敗をしたからだ。
それまではどの企業も見学や面接に来る新卒に様々な接待や土産までたっぷり用意して歓迎していたのだが、求人を著しく絞るかそのものを無くした。彼らはそんな中僅かな求人に対し、その職を望むと望まざるとにかかわらず殺到するしかなかった。
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