契約

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 人によっては数百受けても内定は取れず、身内やコネが無い者は職につけないなんて話が疑われもせず信じられた時代だった。  その結果彼らの多くは非正規雇用で食い繋ぐしか道は無かった。年功序列で中途採用を好まない慣習の国で、新卒で入社できなかった事そしてそれ故キャリアを積めなかった事は後々まで彼らを苦しめる事になる。  さらには数年後、外国の大手投資会社の倒産の影響がこの国にも押し寄せリストラブームとなった。真っ先に対象になったのが非正規雇用者だ。派遣切りと呼ばれるそれは最も保障の無い彼らに対して容赦なく実行された。  正社員にまで及んだとてキャリアを積んだ高給取りやまだ給料が安くこれからキャリアを積める若手はこれを免れ、切られたのは彼らの世代だった。  その結果ブラック企業と呼ばれる非人道的な企業で働かざるを得ない者も現れ、精神を病んでひきこもってしまう者も多く出た。  彼らが貧困から家庭を持てず、国を担う筈だった子供が生まれない事に焦った政府がようやく支援を始める事を謡ったがそれもポーズでしかなかった。  そもそも企業がその年齢を中途採用するには相応のキャリアを求めていた。非正規として扱われてきた彼らにそれは当然無かった。  さらには45歳定年制が言われ始め、それが広まれば彼らから雇用そのものが失われるのだ。
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