7人が本棚に入れています
本棚に追加
生まれる新たな形での経済格差に政府は脅威を覚え新たな法整備を異例の速さで進め始めた。だが、政府が無視できぬほど力をつけた『徳』の民は汚職や利権を良しとしてきた政府に対しても否を唱えた。
国を守る為、良くする為、子供たちの為、戦時中命を投げ出した若者達の様に、悪魔に魂を投げ出す者は少なくなかったのだ。
魂だけではなく命の犠牲も伴いながらも、やがて完全に新しい政府が立ち上がった。そこには世襲議員や傀儡もおらず、立場と責任を理解した者だけが集まっていた。
人こそ国家とし、何よりも道徳に力を入れるこの国の信用は他国からも厚く、農、工、共に非常に高い品質である事や、観光においても心遣いの細やかさから憧れの国となる一方、国際的に問題を起こす事が多い国とは取引をせず、それゆえ足元を見られる事も無かった。道徳に欠けた者は居場所が無く国外に出るか淘汰されて行った。
この国が国交に求めるのはただ一つ、道徳心だけだった。
百年弱で多くの魂の犠牲の上に絵に描いた様な理想国家が完成したのである。
最初のコメントを投稿しよう!