わたしが年を取らないのは不思議なモノたちが会いに来るせい

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  『年齢確認をおこなってください』  機械に表示された無機質な文字。  何の躊躇いもなく画面の『はい』に指を乗せる。  店員の訝しむような視線がわたしに寄越されたが、すぐに品物を入れた袋をわたしにずいと差し出してきた。  このやりとりは慣れている。  二十歳もいかない見た目をしているが、ゆうに四十歳を過ぎている。  童顔のせいだけではない。そもそも童顔だとしても、四十代の女が二十歳にもならない若者と並び立つのは流石に無理がある。  店を出ると、何か視線を感じた、ような気がしたが目もくれなかった。  見たいものは、わたしが決めたいのだ。  わたしは、自分がいつからか人よりも年を取っていないことに気付いた。  手を広げて、手の甲を見る。きめの細かい、白くてほっそりとした、まだ人生が深く刻まれていない手だ。水仕事もそれなりにするわりに、荒れてもいない、傷ひとつない手だった。  それでも全く年を取らないわけではない。  ゆっくりと、ゆるく、年を重ねているのを感じられる。  この手もいつか陰影の濃い手に変わるだろう。  身だしなみとしてハンドクリームを塗っているが、いつしか丹念に擦り込む日が来るのだろうか。  
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