初めてがいっぱい

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 三人だけの会社は寂しいが三人の仲が良いと楽しい。清水七緒(しみずななお)の職場は四十五歳の社長と三十二歳で建築設備設計士の深瀬裕司(ふかせゆうじ)がいる。二人とも明るくて親しみやすい良い雰囲気だ。『宮原設備設計事務所』はいつも和気あいあいとしている。 七緒はここでCADオペレーターの仕事を任されている。パソコンにマウスで図面を書く仕事だ。七緒は二十四歳。大学を出てゼネコンに入社しようと思っていたが叔母の知り合いがここの社長だったため、是非とも働いてくれとこの会社に入社した。初めて就職した会社だ。七緒が入るまでパートの五十代の女性がCADを使っていたのだという。 この会社には特別に仕事を発注してくれている会社がある。従業員三十人の建築会社だ。会社の名前は『テック建築事務所』。仕事はそこからメールやファックスで送られてきて、それを元に深瀬が設計をし、七緒が図面を書く。テック建築事務所は東京でここは埼玉の北部だ。実際会わなくてもことが足りるので行き来することは殆どない。 今日は特別に冷える。大寒を過ぎたら三寒四温になるというが今日も北風が強く吹いている。七緒は自転車通勤だ。車の免許はあるが二キロくらいの距離は自転車や歩きのほうが運動になる。会社とアパートの間にスーパーマーケットもコンビニもあるし困ることはない。でも風の強い日は大変だ。
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