台原の4人

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台原の4人

 仙台市の地上へ。 羽根がひらひらと舞い落ちていく。 風に吹かれあちこちへ移りながらひらひらと。 ひらひらと。 仙台市の台原の道路に落ちて風に吹かれてひゅっと上がったり下がったり移りラーメン屋の出入口にふわりと落ちる。  そのラーメン屋の中に居たのは成瀬右近、40歳。今日40歳になった。  近くのラーメン屋でチャーシュー麺を食べていた。 客は俺しかいない。 店員は一人で作り一人でこの店でラーメンを作る仕事で、24歳の若さである。 俺とは近所の仲で親しくなっている。 佐藤の父親と母親は亡くなり娘である恵海(えみ)はラーメン屋を継いだ。 味は、違うが俺はいつもラーメン屋に食べにくる。 「成瀬さん、今日から40ですね」 恵海はカウンターに座る俺に言った。 「40の男はどうなるんでしょうね」 俺は悲しくなって言った。 若い女性はどう思うのか?40から身体はどうなっていくのか?不安もある。  仙台市台原にある小さなラーメン屋と近所に住む俺、独身で一階の生協でバイトをする情けない俺はこれからどうなっていくのか。 生協から小学校と障害者訓練校を進んで恵海のラーメン屋に来るまで徒歩10分位だろうか。 ラーメン屋から先は林の中を通ればデパートがある。生協から案内したけど細道の台原である。 「どうなるかはわからないけど、お祝いに映画でも行く?」 恵海は言った。顔が紅くなっていた。 俺は嬉しかった。 ラーメン屋で会うのは初めてだった。  台原の生協には何でも売ってる。 隅に自販機が数台と椅子と灰皿が置いてある。 障害者訓練校の男女やこの辺に住んでる男女が集まり煙草と珈琲を買って会話を楽しむ場所になっている。 生協の前にある小さな広場にはいつも来ている焼き鳥の車で商売に来ている焼き鳥屋がいる。 この生協の2階から上の方から全てマンションになっている。  訓練校の寮生活の男女が煙草を吸いに来ている。 買い物をしに来ている2階からのマンションに住んでる方々、障害者訓練校の寮生活の方々、近所の方々。  障害者訓練校の山田勇と庄司佳織がいた。 庄司佳織は障害者訓練校の生徒だけど台原に住んでいるので寮にはいない。山田勇は寮に住んでいる。家は福島県郡山市だからだ。 山田勇は煙草を吸い、庄司佳織も煙草を吸い、会話が二人のあいだで飛び交う。 「山田は福島県でしょう?私は台原。卒業したら遠距離だよ、しかも私は車椅子だよ、大変だよ」「でも、俺、庄司が好きなんです。この気持ちはどうなるんです?」 「諦め、新しい恋、とか」 庄司佳織は冷めた声で言った。 山田勇はモヤモヤとした気持ちで庄司佳織を見つめた。  障害者訓練校の学校とミズキ寮という寮になっていて男子寮と女子寮に別れている。全体の裏口から生協へすぐ近くで都合かいい。山田勇は学校で告白をして庄司佳織は生協で話をしようと行って山田勇は応えを聴いた。未来を考える庄司佳織と卒業後の事は考えていない山田勇。 だけど山田勇は納得いかない。車椅子と方足がびっこを引く程度の障害。山田勇は悲しい気持ちが湧いていた。  俺は台原のラーメン屋の外で待つ。 ラーメン屋の2階を見る。 恵海は両親が亡くなってから一人で生きてきた。俺は生協の上、10階に住んで1階の生協でバイトして、何もなく40歳まで生きてきた。 恵海は立派だ。きっと情けない俺に恋はないだろう。年齢差も含め。 40歳の誕生日だからお祝いのおまけという感じかな。  それでも楽しめればいいや。
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