成瀬右近

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成瀬右近

 俺と恵海はアーケードを歩く。 恵海の私服を初めて見た。 素敵な女性でドキドキしている。 「成瀬さんと店以外で会うの、初めてだ」 恵海は微笑んだ。 「そうですよね。佐藤さん、俺と出かけるの嬉しい?」 俺は聞いてみた。 「成瀬さんは嬉しいですか?」 恵海は逆に聞いてくる。 「そりゃ、嬉しいです」 照れてしまう。 「私も。」 恵海も照れている。 アーケードの通りに人々が行き交う。 台原の地下鉄から勾当台で降りて歩いてアーケードを二人で歩いている。 右に曲がるところを曲がれば青葉劇場という映画館があるが、真っ直ぐ進めば映画館がある。 青葉劇場の方が人々が行き交う数がかなりの多さだ。 恵海はどちらが好きなのだろうか。 「佐藤さん、観たい映画があったりしますか」 俺は聞いてみた。 「成瀬さんは、森孝宏監督って知ってますか?」 恵海は言った。 森孝宏監督は山形出身の映画監督だ。 作品はいい作品を出している。俺も好きな監督である。 「山形出身の映画監督だよね」 「そう。その森監督の新作が青葉劇場でしてるの。成瀬さんはどうかな?」 「いいね。森監督の新作観よう」 俺はホントは何でも良かった。恵海がいればそれで満足な気がしていた。  青葉劇場に向かって俺と恵海は会話をしながら進んでいく。  スクリーンを前に俺と恵海は座る。 客は居なかった。 映画がはじまり俺は緊張していた。 恵海はどんな気持ちで隣に座るのだろう。  森監督の作品はいい作品だった。 映画を終えると俺と恵海はアーケードに出る。 「ラーメン食べませんか?」 恵海は微笑んだ。 「佐藤さんの店じゃなくて?」 「はい。他のラーメン屋の勉強です」 「佐藤さんがそれでいいのでしたら」 俺と恵海はラーメン屋に行く事にした。 まるでデートみたいで俺は気分が上がる。  映画、ラーメン屋、買い物、散歩と二人でゆったりと過ごした。 勾当台から台原に地下鉄で戻って恵海の店で別れた。 「佐藤さん、ありがとうございました」 「こちらこそ、ありがとうございました」  ゆっくりと生協へ向かう。
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