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その頃ふたりは、ぽかんと口を開けたまま、ネズミー城を見上げていた。
「……ネズミーの王はかなりの権勢を誇っているようだな。このような壮麗な城を建てるとは見事なものだ。光輝偉王の統治は素晴らしい」
「……バーカ。魅鬼威王だろ」
「族っぽい変換をするな」
さっきからキングがやたらとおとなしい。繋がれた手が気になるようだ。角の先まで桃色に染まっている。
――ふたりきりだとあの手この手で誘惑しようとするくせに、人前だと乙女のような恥じらいを見せるとは。
手の角度を変え、指と指を絡める。途端に、絡んだ手のひらがじっとりと汗ばんだ。
「……なあ。お前これ、恋人繋ぎって言うんだぜ?」
「それは初耳だな。ネズミー界では皆こうするのがしきたりのようだから、倣ったまでだ」
「案外、郷に従うタイプかよ」
「寛容と調和を重んじるタイプだ」
光の王は領内マップに目を落とす。
「で、どの街から視察するの?」
「そうだな。では凶暴そうな蒼の小鬼(注:某スティッチのようなもの)の棲処から見ていくとしよう」
恋人繋ぎのまま、ふたりは宇宙的な街(注:某トゥモローランドのようなもの)の方へと進んでいく。
お目付役らはネズミー型のバケツをそれぞれ首にかけ、ポップコーンを頬張りながら、ふたりの追跡を開始した。
「……初々しくてドキドキしますね! 青春映画を見ているみたいです!」
「初デートだもんなぁ。キュンが伝染するわー!」
「でも、初デートでネズミー界に来ると別れるというジンクスがあるようですよ」
「くぅーこれが最初で最後かぁ。そう思うと魅鬼威城が涙にけぶるぜ!」
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