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うなだれた魔族の口から、干しトカゲ臭いため息が堕ちる。
「キングが光の王にちょっかいをかけるのは完璧なるツンデレのなせるわざだと、我々は承知の上で天界に攻撃をしかけていたのだ。だが、まさかそれを光の王ご自身に気づかれてしまうとは……」
キングって、俺様ツンデレ誘い受けだもんなー、マジで尊いわーと、魔族の誰かが呟く。
天族らも同様に、若木の芳香のようなため息を吐いた。
「トップがこのありさまでは、天界と魔界をわざわざ分けた創造主に顔向けができません」
「うむ。何とか我々で世界の秩序を回復せねば」
天・魔両族は頭を悩ませた。
「我々魔の軍勢が、キングを魔界に強制連行しても構わないが……」
「いえ、それでは逆に両者の淡い恋心を煽ることになりかねません! 無理に引き離そうとすれば駆け落ち、結ばれないと悟れば心中、これすなわち恋の運命というものです」
「ではいったい、我々はどうすれば……」
すると天族のひとりが、雲間からさす一条の光のように、すっと立ち上がった。
「ほとぼりが冷めるのを待ちましょう。三日、三週間、三ヶ月、三年という、三なる魔の数字の周期で倦怠期が訪れると世の賢人たちは申します。キング陛下が光の離宮に入り浸るようになり、もうすぐ三週間。そろそろ陛下の潔癖さに嫌気がさしてくる頃合いでしょう」
「ううむ……しかしそれでは決定打に欠ける」
そのとき、そうだ!と魔族の中から声が上がった。
「ハネムーンに行かせてみるってのはどーっスか?」
「ハネムーンだと!? 新婚でもないのにか!」
「ほら、慣れない地で過ごしてみると、いままで気づかなかった嫌な部分が見えたり、頼りない場面に遭遇したりして、互いの気持ちが冷めたりするってゆーでしょ?」
「なるほど、成田離婚計画というわけだな! ナイス☆アイデア!」
おおー!と天・魔両族から拍手喝采が巻き起こる。
かくして、光の王と闇の魔王は、人間界へハネムーンに旅立つことと相成ったのであった。
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