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ワクドキ☆下界ハネムーン!
「キング! これが魔界から人間界への地図、こちらがホテルの予約番号、これがパークチケットです。お小遣いは二日分持たせますが無駄遣いは厳禁ですからね! くれぐれも道端に落ちている物は口に入れないように! わからないことがあれば光の王にご確認下さいね!」
魔族の者たちがかいがいしく世話を焼き、キングのリュックにお菓子を詰め込む。
「おーサンキュー。俺の好きなうまい棒、七つの大罪味全種類入ってんじゃん! 気が利くぅ!」
「……おぬしは王というより、大家族の末っ子という感じだな」
待ち合わせ場所の雲の上の集会場にて、光の王が春の伊吹のような呆れ笑いをこぼす。
「お気をつけていってらっしゃいませーー! 陛下ーーキングーー!」
「うちのキングをよろしく頼みますーー陛下ーー!」
天・魔両族らが手を振ってふたりを見送る。一応ふたりにはハネムーンではなく、〈人間界視察旅行〉であると言って話を進めた。
無事に人間界へと旅立ったのを確認し、天・魔両族より若手の者がふたりずつ、密かに後を追う。お目付役として、ふたりの安全と貞操の見守りが任務である。
☆ ☆ ☆
ところ変わって人間界、厳密には東京都ではないが、東京都の支配圏内。
「見て見て! あのヴィランコスプレ、超本格的! 角のリアルさ特撮並じゃね?」
「しかも連れの外人、美形すぎん? ガチのパリコレモデルってやつ? 髪の毛サラッツヤだし、後光がマジで神なんですけど!」
下界において最も夢と魔法が満ちあふれる強国、ネズミー界に入場し、ふたりは早速領内マップを広げている。
「すみせーん、一緒に写真撮って下さーい!」
「うわっ、クオリティ激ヤバ! 写真、インスタに上げてもいいですか?!」
早速ふたりの王は、頭にネズミの耳を生やした女子高生どもに包囲されている。
予期せぬ事態に、キングはおろおろと光の王を見上げた。
「……お前、いんすたって知ってる? 淫らな星のことか?」
「……違う。しかしまずいことになったな。おそらく我々の姿は写真に映らないのだ」
光の王は逃亡を決めた。キングの手をつかみ、ネズミー界領内へと走り出す。
それを目にした四人のお目付役たち。慌ててネズミー像の影から飛び出した。
「ちょい、ちょい! 手を取り合って走り出すなんて、早速駆け落ちかよ!」
「ダメダメ! 駆け落ちなんて、ほとぼりが冷めればどうせ別れるんですからー!」
ところが姿を現した途端、獲物に逃げられた女子高生どもにあえなく捕まってしまう。
「うっわー、こっちのお兄さんたちのコスプレも激アツ!」
「あれ、いまってネズミーのハロウィン期間なんだっけ? コスプレ率多くね?」
「シャンプー、どこのメーカー使ってるんですか? ストパかけてます?」
群がる女子高生らにペコペコ頭を下げ、お目付役らはふたりの姿を追いかけていった。
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