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天界にて
「陛下! またしても魔族の軍勢が攻め寄せて参りました! 今週三度目です!」
「何だと? ようやく先の大戦の大掃除が終わったばかりだというのに、嫌がらせが過ぎるぞ」
陛下――この世を遍く照らし、善行と徳と清潔を愛する光の王は、その報告を聞き見目麗しい両眼を吊り上げた。
天族らは美しい鼻をつまみ、いっせいに表情を歪める。
「もう到着したらしいな。臭い! 匂うぞ! あやつらには、足を洗うという習慣がないのでしょうか?!」
「ええい、穢らわしい! ゴミ溜めより生まれし魔族が! ただちに恵みの雨を降らせろ!」
白き雲のあいまより、脱臭と漂白のダブルの作用がある恵みの雨が降る。
だが魔族の軍勢は恐るべき暴風によりそれを吹き飛ばし、悠々と天界に足を踏み入れた。
「陛下! バイ菌どもが我が領地に足を踏み入れました!」
「何ぃ!? せめてその小汚い靴を脱げと……いや、裸足の方が匂うゆえ決して脱がせるな! せめて足を地につけるなと……」
「陛下ぁ! もう手遅れです! みんなでピカピカに磨いた廊下がぁ……これほどの徒労がこの世にあるでしょうか!」
塵ひとつなき純白の回廊は、すでに無数の臭く汚い足跡で蹂躙され、見る影もないありさまである。
天族の軍勢は美しい鼻を清浄なる洗濯バサミではさみ、麗しい目尻に涙を浮かべ、勇敢にも魔族の軍勢の前に立ちはだかった。
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