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「まおくのおうよ! こちられおいひとひえあいまう!(魔族の王よ! こちらでお引き取り願います!)」
悪行と罪と不潔を愛する魔族の王――自称デス・キングは、鋭い牙ののぞく青黒い唇をにやりと歪ませた。
「何を言っているのかさっぱりわからぁん! 早くお前らの王をこの場に連れてこい!」
「言われなくともここにいる」
引き止める天族の軍勢をかきわけ、眩い後光を放つ光の王が姿を現す。
「おお、天則通りのシミ・シワひとつない純白の衣での登場か。その新発売の柔軟剤の香り、虫唾が走るわ!」
デス・キングは太古の昔より洗濯などしたことのない黒豹の毛皮と、墓場でせっせと収集したカラスの羽飾り、そして髑髏をつなげた首飾りを首にかけ、頭には二本の湾曲した角、その顔は灰と泥に塗れ、黒々とした髪は鬣のように逆立ち、青黒いアイラインを引いている。
小汚いデスメタル風のいでたちである。
「……キングよ、いつまでモラトリアムを続けるつもりか。穢れなき天界の窓を、いったい何枚割れば卒業できるのだ。そろそろ風呂に入ってまともな社会人になれ」
「うっせー! 猫被り! いい子ぶりっ子! 内申点稼ぎ! 漂白剤で指紋消えてやんの! バーカバーカ!」
魔族らは中指を立て、ピアスの刺さった青黒い舌をつきだし、天族らを煽る。
天族と言えど、馬鹿にされれば腹も立つ。
「陛下! 早くあやつらに裁きの雷を! これ以上ここに引き留めれば、匂いが染み込みます!」
意を決し、光の王は清き袖の下より裁きの雷を取り出した。
それは魔族らが最も恐れる、除臭殺菌光線兵器キレイキレイである。
鋭い光線を放つキレイキレイの登場に、たちまち魔族らの阿鼻叫喚が巻き起こる。
魔族らは正気を失い、混乱に陥り、捨て身の覚悟でつぎつぎと天族らに飛びかかった。
「ぎゃあああ!! バカ、抱きつくなぁあ!!」
「おええええ!! 臭い!! 私の服で鼻水拭くなぁああ!!」
これが永久なる光と闇の戦い――今週三度目の大戦である。
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