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「あっ、そうだ悠真。
今度さ、イッシーさんがオレの店に来てくれることになったよ」
「えっ? あのゲイバーのマスターが?」
悠真の問いに、うんと頷いた。
「もう何年もお店に行ってないし、どうしてるかなって思ってSNSにコメント入れてみたら、すごく懐かしがられてさ。
“ハチの美容院に行くわ~”って、予約入れてくれたんだ。
悠真にも会いたいってさ」
「わぁ。
なんかハチって呼び名、久しぶりに聞いた」
「ははっ、確かに。
まぁ、もともとゲイバーにいる時だけ使ってた名前だから。
あそこに行かなくなったら、誰もオレをハチとは呼ばないよなあ」
悠真も、いつの間にかオレをハチとは呼ばなくなっていた。
悠真がそのちゃんと離婚する時、想像していた以上に手続きに時間がかかってしまって、長く会えない時期があった。
ようやく会えた時にオレが“忠犬ハチ公みたいに待ってた”って言って泣いたことを、悠真はずっと申し訳なく思っていたんだとか。
もう二度とオレにあんな寂しい思いはさせたくないって思って、それでハチって呼ぶのはやめて名前で呼ぶことにしたらしい。
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