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「なんか不思議だよね。
あのゲイバーがなかったら、俺と瑛斗って出会ってないんだもんね」
悠真がしみじみと言った。
「本当そうだよな。
あの日悠真がゲイバーに来てなかったら。
来ていてもイッシーさんに声をかけるように言われてなかったら、オレ達は今こうしてないよ」
ほんの少し時間がズレていてもダメだった。
あの時じゃなければ……。
「それ言ったらさ、苑香が浮気してなかったら、俺はあのバーには行ってないわけで。
そう考えたら、苑香に感謝しないといけないのかもね」
「いや、待って。
ホテルで寝ただけなら、オレ達付き合ってはないよ。
だってオレは、関わるのは一回限りって決めてたんだから。
美容院で再会したから恋に落ちたんだ。
ーとなると、オレを美容師になる道に引き込んでくれた峰子さんに感謝?」
オレの言葉に、悠真がクスリと笑う。
「その峰子さんに出会えたのはなぜ?」
「えっ、それは……。
父さんと母さんが毎日ケンカばっかしてて離婚寸前でムシャクシャしてて、家にいたくなくてあの美容院の近くをウロウロしてたから。
あれ? ってことは……」
「そう。
瑛斗のご両親が離婚してないと、俺と瑛斗は出会えていない」
悠真に言われて、ぞわーっと全身に鳥肌が立った。
悠真と恋人になるまでの軌跡を考えると、まさに奇跡としか思えない。
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