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―
そして ふたりは ...
... Switch ...
―
" ワタクシ ” なん て…
ワタシには
似合わないの に?
なんで " 謂わされて ” た んだろ…
―
郊外の大規模な
住宅展示場の平日は静かで …
それでも 各社の最新タイプの
キラキラなモデルハウスたちは
距離が保たれ 配置されている
なにせ お隣りは ライバル社の展示物
モデルハウス前には少しでも目立とうと
植栽に凝るだけではなく
のぼりを立てたり 縁日のような屋台や
ワゴンを出したり
各社が個性を出し 無意味なキレイな
お姉さんを立たせたり
自社のゆるキャラを遊ばせていたりと
実はバチバチで …
ここで働く者は それぞれ
気やすく お隣りさんには 近寄れない
そんなここの
モデルハウスの数は 県内で一番多く
70棟ほど で 来客用駐車スペースは
それらをグルっと囲むように200台分で
横浜駅からは
ここへの無料バスも動いている
そんなに 大規模な住宅展示場は
広大な敷地の割には まだ早い
夕方の18時になると もうだんだんと
どこも静かになっていき ここ一帯だけ
" ぽっかり ” と 異 空間 に なる
その様は隣地から見ると 薄暗く
ここではなにも動かないし ここからは
なにも聞こえてこない
ここで働く者は
ほとんどが営業担当で 車通勤 で
その駐車場は場外にあり
そこは この規模の住宅展示場だと
自分たちが居る処から 夜は真っ暗な
かなり離れた 裏手に設けられている
けれど そこも ライバル社と
共に 車を並べることになるので
会社同士の勢力争いもあって …
なのでここは 一見 静かな様で
あっても 社外でも 社内でも
いろいろな事が ある …
そのひとつ の 或る
メーカーのモデルハウス
その職場は
ワタクシが入るまで は
少人数の集団のStaff たちは
一つに纏まっていた けど
ワタクシがそこに入った事で
なにかかが崩れ
ソノヒトは
そんなワタクシを護るために
その職場で 悪者に なった
それを
周りの人は判っている から
だれも ソノヒトの味方にはならない
だから ソノヒトは …
" もっと ” 悪者 に なって …
そして … ワタクシは
" ワタシ ” に なった …
―
… ソノヒトが ソコに居なかったら
ワタシは きっと 耐えられなくて
1日でソコを辞めていた …
… けれど そうして 護られたから
つぎは … " 力 ” の ある " 主人 ” が
悪者に なる まで …
ワタシは ソノヒトと一緒に居た …
―
ひとつ前の冬 …
それは とても 短い間 だったから
ワタクシは まだ その " 別れ ” が
受け入れられなくて
… 主人 に?
ナニカ されたの かな …
ワタクシと 離す ために …
ワタクシが家の中では ぼんやり
していたのかもしれないけれど
いっしょに 暮らしていた
小豆シバが 旅立って もうすぐ 1年
シャワー後の カラダを 乾かすために
リビングに ワタクシが独りで 居ると
… カ っ シャ ァ
カサっ カサァ …
" ぇ! ”
… ん ? な に ? …
聴こえ た ? …
いままで こんな事
なかった ? よね …
ワタクシがソファに腰かけている時に?
ふと …
気づいた …
あのこ と お別れして 初めて迎えた
もう 寒い季節 に …
その 音 …
… カサっ カサァ …
って … なんで ?…
ワタクシ 独りなのに …
どうして … 音 が ?
で … それ … の ?
その音 が 聴こえるのが
気になって …
だって ヘンだし!
それ に!
その音 は …
たしかに 以前は 何度も
このリビングで聴こえてた 音 で
あのこが
フローリングの上を歩く時に …
ワタクシを目がけて走り出した ら …
聴こえてた 爪 の! あたる 音 …
それが ?
聴こえるなん て …
もう 1年に なるの に …
その音 覚えてるから
あのこを 想いだす …
独りだから
ワタクシが動かなければ
音なんて …
なにもしないはず なの に …
… カサっ …
… ぇ? … ほら ! また …
❀.
ぅ ! … ふっ ふふふっ …
へぇー 不思議 ぃ!
これ … 恐くないし
ゼンゼン 嫌じゃ ない !
そ ! ワタクシに
逢いに来てくれて !
うん … そ
嬉しくて …
その音のほうへ …
聴こえたとたんに ワタクシは
振り返る! だって 怖くないし!
… カサっ !
!ぁ…
『 … は いっ!』
珍しく ワタクシは 声を 出した
その音 … 儚い? くらい …
短くて 小さくて スグ なくなる 音
だけど
それでも … それ !
聴こえた ら !
そのたびに
ワタクシ 口元が緩んでしまう …
でも …
独りのときに はっきり 聞こえ る
その音 聴こえだして 30分程過ぎた頃
解ってしま って …
あ …
そう … 目の前 !
テーブルの上に置いてある
ケースに 入れる 前の
ティッシュペーパーの
透明な袋の 音 … それが この
寒い日には かたくなって て …
そこに ワタクシがリビングに入った事
で人感センサーが反応してエアコンの風
がワタクシが居るソファ近くに向きを変
え その風が
目の前のテーブルにも当たって
だんだん それが温まると そう …
… カサっ カサカサァ …
って …
音 を 出してた
でも …
そっくり …
同じ なの …
あのこの 音と …
そう … 聴こえ る …
だから …
その音が聴こえたら
あのこ が
一緒に 居る気が して …
ワタクシは 口元が緩んでしまう …
なら …
いいの …
それが聴こえた ら …
目を閉じて …
そっちを見ないで !
しばらく ジッとして
静かに して る …
こんな家でも!
それが 心地よい
時 に なるから …
ぁあ …
それでも … どうしよ …
今日は これ … " 清掃さん “ が
きっと ケースにセットしていくの
忘れたからなんだけど このまま
ティッシュペーパー 使ってたら …
どんどん なくなって …
このティッシュペーパーなくなったら
この袋 も … だから …
また …
この音 しなくなっちゃうの に …
ん … うん …
それは そう … で …
で … も …
ぁあ … なんだ …
そ … … かぁ !
これがなくなったら …
また … 同じ の !
買いに行けば いいんだね …
そしたら また …
この音 が …
… どこの店で?
これ 買えるかな …
ワタクシは 清掃さんタチとはお話しで
きない し
だって この家で 主人が居ない時に
ダレカと? お話なんかしたら!
それ 主人に知られたら …
その清掃さん たぶん …
" 外される “ かも ! だし …
ワタクシ そんな 余計な事 ?
できないし …
これ …
現実 そんな カンジ …
でも …
音の正体を知ったら
なおさら …
ゼンゼン違うのだって
分かる けど …
あのこが居なくなって
初めての 冬 …
初めて 聴こえた この音
それ 偶然 なの かな …
ぁ も! それ
どうでもい ぃ …
だって … この !
寒い季節 の間 は …
きっと その音に乗って
あのこが ここに … また …
なら … " 望み “? 持って
い よ …
ワタクシは きっと …
次の 2回目の冬も
このティッシュを
テーブルの上に置いて
気づけない ふりをして
あのこの ことを ここで …
想って いる …
って …
思ってた …
―
… けど
『 いいよ …
ベッドから出ないで … 』
「・・・・・」
ワタクシは " そんなことを云う ”
12歳上の主人に 無表情のまま で
「 おはようございます 」
すらも …
云わない で
だるいカラダを休めるため
に ただ 目を閉じる
だって
主人は 夜 ベッドに入れば
ワタクシを抱き 朝 ワタクシが目覚め
るとまた ワタクシを抱く から …
ワタクシは だる い …
主人は 事 が 済むと
ベッドからガサゴソと抜け出し
満足そうに息を
" ハァ---! ” と 吐くと 振り返り
いったん バサッ! と
布団をゼンブ剥がすと
自分の体臭が残った シーツで
そこに横たわったまま 動かない
ワタクシの カラダ を …
まるでラッピングするように 丁寧 に
そっ と シーツを カラダに添わせ
ながら 包み込むように 折り 上げる
そうして包み終わると また 満足そう
に 優しく
… パサっ
その上に布団を掛けて
自分だけ 寝室から静かに出ていく
主人のそんな手で " 隠された ”
まるで
" 繭 ” のようになったワタクシは
布団を剥がされた一瞬は
きゅうに 動いた空気にさらされ
… びくっ!
カラダは固くなるけれど
静かに主人が出ていく頃には
呼吸が浅くなる
嫌な 主人の残り香にしっかりと包み
こまれているから
もう ぼんやり としてきて …
しだいに … 意識は遠くなり …
❀❁.
… 次に 殺される のは …
きっと そう だから …
だって …
これは あのこ の 最期と同じ姿 …
" ワタクシは シーツにくるまれ ”
それ を 想像させられ て
いつか来る その時 を
" 覚 悟 ” させ ら れる …
ワタクシの朝は この繰り返し …
それは " 恐 怖 “
で? " 絶 望 ” で も …
… もう なにも 感じ な い …
ただ … ワタクシは 無気力に
もう 眠りの中 に いる …
これが " 朝 の 事 ”
… パタン
寝室から出て往く
主人は もちろん 今日も仕事で
ワタクシが そのまま 横になったまま
起き上がらないから
独り 朝の身支度を整え
自分で入れた黒いコーヒーを口に含むと
そのカップと 一緒に玄関へ進み
… ゴクっ
!ゥイ---ン
お気に入りの肌触りも良いカップと共に
スポーツタイプの黒い車に乗り込み
ゥイ---ン!
ドゥル ン
ブゥォ ――――ン!
仕事で 出て往く
その 耳障りな地響きするエンジン音も
主人と一緒に動いていた 拡がって漂う
大人なコーヒーの香り も
音の漏れない " 特 注 ” の
ドアが閉められた
寝室のベッドの中に居る
ワタクシには
届いてこない
ワタクシは そこに独り
「・・・・」
夢の中でも 起きていて も
独りだから ワタクシは もう
動かずに なにも 喋らない
そう … 家の中も
ワタクシ 独り だから まわりには
なにも物音もしないし ここは静か
―
そんな ここ は
日本で一番大きなデべが開発した
横浜のニュータウン
家の敷地は
150坪ほどで 輸入品を多く使用した
家のグレードは高く
セキュリティーも ここ一帯
大手のセキュリティー会社が 24時間
パトロール巡回もしながら 専用の防災
センターも設けて 管理してる
家の鍵は電子錠 …
まるで日本じゃないみたい
な …
主人がこの家を購入し ここで生活を
している " 事 ” を この セキュ
リティー会社は シッカリ と
デべから引き継ぎ いつも気にかけ
この家の購入時に 主人を " 調査済 ”
のこの デべは
主人がここに住み続ける事を
自分たちに 善いように
意味づけよう と
「 こちら お住いの具合は
いかがでしょう …
不具合など お気づきの
事 が 御座いましたら
すぐに 御手直しを
させて戴きますが … 」
「 ん …
ありがとう … 」
その会社のお偉いさんの方々が ときに
黒く光るピカピカな車でわが家へお越し
になって 部下ともども 玄関先で
黒い服の主人 と 白い服のワタクシに
頭を下げて挨拶をする事 も
何度も ある
そんな …
ここの家はどれも立派で それらの家に
は 凄い車が 何台も留められていて…
それなのに
そんな中でも主人は " 別 格 ” で …
けれど それほどな ご近所の方々 …
ここは
このデべに 選ばれた者 だけが
暮らしている …
それほど な
ここの方々は " 電車通勤 ” を
必要としない方々 で …
お隣 川崎の大手電機メーカーの副社長
さんや 東京国際空港に乗り込む飛行機
が待っているパイロットさん
近くの大学の教授 いつも忙しそう に
世界を駆け巡っている外交官のようなお
仕事をしている N●Kのご主人に
横浜を中心に全国で活躍している弁護士
さん の方々 や …
横浜にチームの本拠地がある
だれでもが知っている
有名な野球選手や
サッカーのプレーヤー とか …
撮影スタジオまでの アクセスも
良いからか ?
名の知れた 男優さんや
放送作家の方々も 居る
そのせいか
ここの宣伝にもなるからか 近所で
ドラマの撮影をしている事も ある
そんな環境の中の生活 では
主人の " 格 ” の ため にも
なにもしない ワタクシ …
それでも
" 夜 の 事 ” の ために …
ワタクシがこの家の中で 唯一
あわてて動くのは この時 だけ
シャ----------!
今日も 主人が帰ってくる前に その
時間を気にしてシャワーを済ませる …
「 ふぅ------!」
―
ワタクシは 夫のことを ヒトに話す
ときは " 主 人 ” と 口にする
主人は ワタクシの ことを ヒトに
話ときは " 妻 “ と 口にする
ワタクシは
主人が稼いだお金で生活し
日々のほとんどの時間 この静かな家の
中だけで生活し 主人が帰ってくるのを
いつも 独り なにもしないで 待って
いる
主人の気に障る
余計な事をしないように …
そうすると …
月に一度 主人は ワタクシの目の前に
一万円札紙幣を 30枚置き
「 今月の分だ … 」と 一言 添える
このお金は ワタクシのお金 で
ワタクシは 妻だから このお金をもえ
る らしい
でも … このお金は …
ほとんどワタクシは
使う 事が無い
生活費は 主人がいつも
知らないうちに支払い
ここでの 管理費 光熱費 上下水道代
税金など と ワタクシが利用している
各家事サービス料金を主人が毎月支払っ
ている事は 知っていても
それらの
金額を ワタクシは 知らない
ワタクシは ここから離れた外に 買い
物に行くときは たいてい 主人が一緒
なので そこでも主人が会計を済ませる
だから
このお金は 毎月 家に来る
信用金庫のヒトにゼンブ 渡す
で … 入金されるのは
ワタクシ名義の口座だけど
この信用金庫のヒトは
「 ご主人様に宜しくお伝えください 」
と ワタクシに 謂う
ワタクシは
平日の昼間 は いつも
独り だから " ひま ” で
" 退屈 ” だから
独り の時間を持て余し 外に散歩に
出る事もある けど
独りで歩いていても
ここのヒトタチは 自分の足で 歩く
身分ではないから ほとんど 誰とも
出会さないし
たまに遭遇しても ここの奥様タチ は
ワタクシよりも かなり年上で 話 が
合わない し …
ㇷワㇷワ 〰 プラプラ 〰
そんなカンジで歩くワタクシに向かい
A「 あら …
ごきげんよう
お散歩 ? お独りで
身軽なのね! そ!
貴女 ご主人様に
" 守られてて ”
でしたわ ね!
良いわね そうよねぇ
だから …
何も しなくても
いいんでしょ! 」
とか …
B「 ご主人は貴女が
可愛くってしかた
ないみたいね 今日も
貴女ったら
そんなに かわいい
カッコなさってて …
どこのお店のかしら!
ま … それも … あの
ご主人 の 趣味かしら
ね … そう よね …」
C「 あら?
運動なさってるの ?
ぁあ … そうなの
そ の 魅力的 な
スタイルのためにね!
偉いわね … 貴女 …
ふふふ … そんなに ?
ご主人 に ? …」
… ですって! …
… ワタクシは
貴女タチ の 敵 でも
ライバル でも ないのに ?
ここの奥様タチからは
そう 視られて いるよう で …
歩いていただけなのに ?
なんでだろ …
すれ違うだけ でも ? なら
ワザワザ 話しかけなくてもいいのに
ここのヒトタチカラ ワタクシ
蔑まれて いる ? たぶん …
それとも …
コノヒトタチからは
ワタクシって 毎日 楽しそうって ?
ここでの生活
幸せそう に ? 見えるのかな ? …
そういえば … 新婚 ? 当時
主人と一緒に並んでいるときだって …
コノヒトタチ
『 まだ学生さんかしら ?
お若いんですよねぇ! 』
『 まぁ ! !
お嬢ちゃま ? ね!
あ ? やだ! 奥さま ?
です こと … よね ! 』
ここに入居シタテ の 頃から
そう 云われて た な …
主人とワタクシは なにもかも が
違い過ぎて いて 最初から ゼンゼン
夫婦 ? には見えないみたいだった し
あ ? で …
主人は そう云われた時には
ニコニコで
嬉しそう ?
だった っけ …
でも それだって
それが 主人にとっての
ワタクシの 存在価値な ら
年下は 変わりなく ずっと
同じだけ 年は下だけど …
ワタクシ も 26歳に なって る
シャ----------!
シャ----------!
… キュ!
… バッサッ!
… あ!…
いつも 同じ … セットされて る
バスタオル 主人のは 黒の色 で
ワタクシのは いっつも 白 だ な
❀❁❀.
ぁ------あ !
ここは 横浜 なのに … な …
―
こんな …
港から 離れた " 山の上 ” の
空気は ワタクシ 嫌 になる事もある
ワタクシはここから離れようと
車を運転してみても
それでもやっぱり
独り だと ツマラナイ …
それに …
この車はワタクシのだけど
居心地は良くはなく
そんな車の手入れも してあげない
なので この 白い車を ワタクシは
ただ使い 管理をしていない
好き勝手に使ってるけど
そのために減るガソリンの給油にスタン
ドに寄る事もない し
いつも磨き上げられた ピカピカな車の
中も そうした管理をしている
その ヒトタチノ 匂いがするよう で
これも どうせ
ワタクシだけの 匂いにはならないし …
で … この車と一緒 ? の
ここの中で管理されてる ワタクシは
気晴らしに
主人に内緒で なんだかわからない
必要もない物を たまたま 入った店で
買う事もあるけど そんなときは
支払いは card か 電子決済で済ませ
この引き落とし口座は 主人のだけど
いままで なにかいわれた事が ない
そ だから …
そんな主人は いままで …
なにも
ワタクシに怒った事もない
ワタクシは 困った事は ない
ただ
今夜だって
…ドサッ
と 大きなガタイなのに 上になり
ワタクシのカラダがそれで沈んでも
「・・・・・」
「 ぅ…」
そこだけには 乱暴に
主人は
自分を圧しつけてくるから
ワタクシは 硬いまま 柔らかくなる前
なのに 無理やり 開かれ入れられ る
「 ㇷ…」
「 ぁ…」
—
まるで 四肢動物 …
動物で例えると
主人は " ワニ ” みたいなヒト
その顔 も 口は 大きく 目つきは
鋭く まさに そんな カンジだし …
その 動き も …
まったく 動かない と 思いき や
" 獲物 ” を 捕らえるため に は
予測できない ほど 急に 機敏に
素早く 動く から …
不気味 …
それに
12歳の年の差は かなり だし
何事においても 経験の ? 差も
ワタクシは なにをしてみても
主人に 勝てる事 は きっとない …
―
その ワニ みたい な
主人は 不動産鑑定士 で
凄いヒト …
神奈川県庁と 横浜地方裁判所と
横浜市役所と 横浜地方法務局の 近く
家から車で20分ほどの処に事務所を構
えて いる
この場所に 主人が居るせいか 県庁の
ヒト 市役所のヒト 裁判所のヒトタチ
が よく
主人の事務所へ足を運んできては
主人のことを ” 先 生 “ と 呼び
そんな主人は 国内の どこでも
" とくに大きな ” 相手の仕事 しか
受けな い
その 不動産鑑定士事務所には
事務や調査アシスタントの女性が5名と
不動産鑑定士が3名と 協力業者の方々
も出入りしているし 新人不動産鑑定士
が県外からも勉強にやって くる
ワタクシも 主人と結婚するまでは
そこで働いていた でもほんの半年ほど
大学を出て スグ 主人の事務所に就職
したワタクシは 朝は電車通勤で事務所
に出所するけど 帰り は
そこの代表の この " 先 生 ” に
ご自慢の車で送ってもらって帰宅してた
最初からそうだったから なにも
" 特 別 ” だとは 思わずに …
そして
ちゃんと家まで送られるから
先生は玄関先まで一緒に来て
出迎えた
母親に挨拶して …
その挨拶に 何の意味 が あったのか
ワタクシには 全く解からなかったけど
ワタクシの意思 ? は 無視された
まま ?
その3か月後には 結納の日 があって
そして その3か月後に
" 先 生 ” と 結婚 した
そんな結婚までの間 は
あまりの速さに ワタクシ自身 は
なにを ? したの ? かも
覚えて ? いない し
だからきっと ワタクシは その間も
なにも していない …
って …
いう の は ワタクシの 逃げ で
実の母との 関係が悪かったワタクシは
このとき なにも気づかないふりをして
流され た のが ホントの とこ で
それは
母から 離れたかった か ら
だから いまは
主人と上手くいっていなくても
この実家には戻りたくはなかった
その ワタクシの 心の 雑音を
主人が知っているのかは判らない
けれど
主人は ワタシが出た後 独りに
なった母の生活をずっと援助している
から
ワタクシは
主人から逃げられない
って 義務? みたいな も の?
縛られてて
だって …
母が 苦手だった けど
あのヒト やっぱ 母 だし …
そんなカンジ
しかも ? ワタクシが 愚かなのは
あのとき
主人は ドンドン 話を進め
手続も サッサとしてしまい
役所への届出も ワタクシは
一緒に行って ない し それに …
ワタクシ 婚姻届 ? 署名した記憶 ?
その用紙 ? 目にした記憶が ない …
そんなんだから
ワタクシは 主人の事 実は
それほど 知らないし
ワタクシが主人 の
“ 何人目の妻 ”? なのか も
知らない
だからワタクシには
主人が ホント 不気味で
どうして善いのか分からないし
主人の周りのヒトも
そんなワタクシに は
主人の事を なにも 教えてくれない
し 気遣っても くれ ない
でも … 横浜のホテルで挙式と
披露宴をしたのは覚えてるから
結婚はして る
" それ ” が
心配になったときもあるけど
ちょっと前 ワタクシが貧血で倒れたと
き 運ばれた病院で出された ワタクシ
の保険証は 主人の姓になっていたし
なので …
あ … 就職の時も ?
ワタクシ 奨学金だったから
学生時代は頑張って勉強してて …
主人の事務所には 教授の推薦で
「 あそこにしなさい 」 って …
だから 面接受けて
入った け ど
それも …
大人同士で 決められてたのかな …
考えるなら そのときだった
って 後悔 …
だって …
事務所に入ったから
こう なったんだし …
も少し 考えれば良かった けど
ね … 教授推薦は 断れないじゃん ね
しょうがない ? しようが ない ?
ゼンブ 受け身 な ワタクシ …
―
社会人だったのも タッタ 半年 …
だから ワタクシ なにもできないまま
大学を出るまでは実家に居たから
子供のままで 社会人 ? は
半年で終わったから
職場でもなにもできないまま で …
そんな実家を出てスグにこの家に入り
結婚して家の中に居ても
主人と二人の生活は
ほとんど 主人の居ない毎日だし …
だから あのこ と 居たのに
ほんの一瞬? だったな それは …
主人がワタクシに与えた者だったから
主人 考え た ?
この家にワタクシが慣れるまでの間 ?
の ための者 ? だったのか な
だから もう ?
そんなに寿命は短くないはずなのに ?
居なくなっちゃった し
で 主人はいつも 夜に帰り
朝 出かけて往く の で
ずっと ワタクシは 独り で
することもない し …
この家での生活 … ホント 静か …
家の中には ヒトが居るのに …
洗濯は クリーニングのヒトが 家まで
集荷に来てくれるし その納品は 玄関
横のWICに入れてってくれるし
食事 は 主人 家 では
食べないの で ワタクシだけ だから
ケータリング で …
担当者はワタクシが寝室に
" 隠れている ” 間に
ワタクシと顔を合わせる事もなく
キッチンで支度をし ダイニング に
セットして 帰って往く …
ワタクシはいつも黙ってドアのロック
解除をするだけで そのとき だって
ソノヒトとは なにも 話はしな い
そのほうが ソノヒトたちも
仕事が しやすいようだし
家の中あちこちにcamera を設置して
監視している 主人も気分を害さない
だから 主人は安心していて
いつも同じヒトタチが 居る
で …
家の冷蔵庫には 飲み物
だけしか 入っていない
なので ゴミ出しも
ワタクシはしたこと が ないし
ハウスクリーニングは 主人とワタクシ
がまだ寝ている 早朝から たった2時
間で 家じゅうをピカピカに する
白いフローリングは 何年 経っても
白いまま …
そんな凄腕の業者が入って いて …
バスルームは 黒一色 の大理石 で
ソファ も テーブルも
ファニチャーは 黒か白 の色 だけ
寝室は …
天窓だけで 壁に窓がなく
外からは 通り過ぎるだけじゃ
見えないけれど この家
どの窓にも カーテンは ない
から か 生活感のない
モデルハウスみたい … だし
ワタクシは … 気晴らしの散歩 以外
主人が 休みの日でずっと一緒に居る日
とかにしか 昼間 も 寝室のベッドか
ら は
" 出 る ” 事は なかった
なんなら 素のまま 寝室 で
夜の事 の 前の シャワーまで …
主人が 帰ってくるまでに シャワーを
済ませて その體でベッドに入り …
そして 食事を済ませてから帰宅してく
る 主人に また 抱かれる
毎回 …
ワタクシが先にシャワーを済ませて
待って いるの は
主人を立てているのではなくて
バスルームに残る
主人の匂いが苦手だからで
むせ る から …
だから …
抱かれて る の だって
もちろん 感じて ないし …
主人が顔を寄せてくれば
ワタクシは 顎を引き
口は開かないように 歯を強く
合わせ そのせいで唇は震えても
カラダはそれで硬くなる …
それでも …
主人は なにも
ワタクシの気持ちとかを
訊かないヒトで 自分だけ いく …
… そんなに
気持ち いいの ?
ワタクシが
感じ て いないのに …
その繰り返し ワタクシ からは
主人に近づかない し
なにも
主人と 話す事もない
―
これって …
ワタクシは動けるから
お人形じゃない けど …
ワタクシ 気ままな ?
いえ …
主人のために この家に居る
愛玩動物 みたいで しょ …
外に出なければ ワタクシには
服もイラナイ 喋れなくても困らない
ここの静かな時間は 長い けど
それだから …
ワタクシ … は …
こんな生活 … って …
… でも な …
こんな 事に なったのは
打算的 な ワタクシ だから で
自分が悪いから
だから
タスケて! って ヒトに云えないし
きっと
ダレ も 助けてくれ ない …
ワタクシ …
なにもできないから な …
頭も良くないし
それに 愛想もない し …
それでも …
外で …
働いてみようかな …
そしたら それを理由に
ここ 出られる から …
お母さん ゴメン …
なにも考えなくても善いかな …
だって 家の中 空気 おもい …
ワタクシが可愛がってた
あのこは もう
いなく なっちゃった から …
—
❀❁❀❁.
… 大丈夫かな …
ワタクシは 主人にどう話すか …
悩み …
… いま か な …
「 あのこが居なく
なったから
独りぼっちだし 外で
働いてみたい … 」
それは主人が 疲れて帰った日
もうきっと 賢い頭も働かない ほど
自分のやりたい事 だけ やって
やすみたい だろうと 思っている ?
その夜の事の前に ワタクシは
ベッドで 呟いてみた …
「 … ん 」
「 ありがとうございま … 」
… バサッ …
『 … ほ ! ら !』
… ぐぃっ
「・・・・」
…ギシギシ…
…ギシギシ…
…ギシギシ…
…ギシギシ…
「 ふ‼ … 」
「・・・・」
「 zzzz…ZZZ…」
「・・・・」
意外にも …
主人はワタクシが外に働きに出る事を
反対はしなかった …
… こんな に あっさり ? …
… なん だ …
… でも …
次の日になれば いくらでも …
こんな事にも 主人は考えたのかな …
―
ワタクシは スキル
何もなく 新卒でもないから
… 自分で云ったのに
すぐにできなくて
カッコ悪い な …
ワタクシが まだ家の中で
ボぉ~ッとしてる間に
そんなだったから ?
主人は ワタクシの働き先を
さっさと 見つけてしまい …
ワタクシは …
また スッキリとはしなかったけれど
ちゃんとした理由で 毎日 長い時間
外に居られて たくさんのヒトタチと
交流できれば … それで …
善い … と
その事 できそうな 仕事
だったから …
この主人の
" 妻 ” の まま だけど
ワタクシは
ハウスメーカに契約社員で入り
営業事務として
横浜の郊外に在る大規模な
テーマパークのような住宅展示場に
" 飾られてる ”
モデルハウスに配属された
… そこで 働いて
何か資格を取って それで転職して
自立すれば善いよね …
そんな 事も頭に置いて …
ワタクシは 主人の
決めた話に 従う事にした
―
… 新しい とこ
どんなとこかな …
それでも 初出勤日 近くになると
ワタクシは 単純に
嬉しかった …
… 外に出れば そこでは人として ?
人間として ? 扱ってもらえるし …
それでも この主人の事だし …
そりゃ いろいろ 心配 ?
も したけど
聴いてみると そんなに
悪い条件でも なかった し …
そこへは 車通勤で
朝 バタバタの ギュウギュウの
煩わしい事は無かったし
朝9時出勤 夕方6時退勤
土日祝日は休みではないけれど
残業はないみたいだし 疲れなさそう…
でも …
この仕事は
主人の力で得たのだし
派手な事ばかりするから この業界で
は 顔も知られた 有力者
の 主人は ここへも 堂々と 現れる
だから それは
保護者のようで
嫌 だった けど
それは主人の想定外
だったのかも …
なにもできない ワタクシだから
ここでの仕事は長続きせずに
そのうち って 思っていたのか …
でも なかなか仕事を辞めない
ワタクシだから
主人は諦めた のか
自分が忙しい のか
ここへ現れる事もなくなり
主人の監視 camera が無いここは
ワタクシにとっては
自由に呼吸ができる処になった
はずだけど
―
でも世の中
そんなに甘くない
そんなに簡単に
ハッピーエンドにはならない
そうみたい …
それは初日から 容赦なく …
―
「 失礼します 」
…パタパタパタ!
「 あ ---! ちょっと!
普通! 裏からでしょ!
玄関! 汚さないでよ!
にぶぅ! " 裏 ” に
廻んな ‼ 」
… え ? 怖っ …
…ずりっ ずりっ…
それは 瞬時に 二歩 ? くらい ?
あとずさり する ほど の …
「 すいません … 」
「 え ?」
カノジョ は ワタクシを睨みつけ
ながら 首を傾げた …
「 裏に回ります … 」
…タタ タタタタ…
… 裏口 ? どこ ?…
でも はやく動かなきゃ …
ワタクシは 初めて来たところだから
キョロキョロしながら裏口を探し …
… ん ? ここかな …
裏口は
とても小さな扉 …
…カチャ
… ピンポン ♬
… あ ? 音 ? ドア開けると ?
センサー ? 鳴るんだ …
だから ? …
さっきも 鳴ったのかな …
「 失礼します … 」
ワタクシは頭を下げながら
足元を確認しながら
自分の靴を脱ぐ場所を見つける
ように入って …
…パタパタパタ…
入って すぐ の 目の前は
事務室に なっていて …
…パタパタパタ…
…パタパタパタ…
… あ … カノジョ ?
また ? 走り寄ってきた …
… 小さいサイズのヒトだな …
… 可愛いぃ … カノジョ …
その … スリッパで 駆けてくる ?
音や 仕草も とても可愛いぃ …
だから
コンナ事するの似合わないのに ?
… なんか 一生懸命に ?
その童顔な ? カノジョは まん丸な
大きな目をさらに大きくし …
眉を上げ ワタクシを 品定め するよ
うに ゆっくりと 下から頭のてっぺん
その髪型 ? まで " 確 認 ” し
「 … へぇ---- ねぇ
奥様だってね " あの先生 ” の!
悪いけど !
あたし ぜんぜん ! それ !
恐くないからさ !
ね ! あんた
車通勤だけどさ " あの車 ”
ウチなんかのじゃないじゃん
ドンビキぃだから電車で来なよ !
新人らしく さ ! 今日は ま
来ちゃったから! 仕方ないけど!
もっと ! 離れた目立たない
とこに留めなさいよ " 迷 惑 ” !」
? … え ?
あんなとこまで ? ミテタの ?…
でも … あそこ は …
事前に 総務から聴いてたか ら …
なんだ けど ? …
アイドル顔のカノジョは
… こんなにかわいいのに ?
… どうして か ?
こんなカンジで …
ワタクシは その時の
人事担当者からは カノジョ以外 は
男性ばかりって聴いてて …
ワタクシ … お仕事も
集団活動 ? も 久しぶり ?
よりも 何年も か! ぶりだから
ほぼ初めて で
それは 心細かったし …
ヒトと触れ合える の は
期待 大で 心待ちに してて
それ 嬉しかったし …
だから このカノジョ と
逢えるの 楽しみ に めちゃ
仲良しになりたかったのに …
なんでかな ?
… 難しい ぃ ? …
それに …
云われたワタクシが自分の車を留めた
とこは住宅展示場 場外の離れた場所
なのに …
同じときに カノジョ ?
それとも ここのダレか ? が
出勤 ? で 居たのかな ?…
なぜか
カノジョは車の事知っていて …
ぇ ? 違和感っぽぃ …
それは …
もう すぐ 春が来るころに
生暖かい風が急にとても強く吹いてきて
それにカラダがゼンゼン
馴染めない みたいに …
❀❁❀❁❀.
まだ …
「 初めまして … 」
の 挨拶の前 なの に
靴を脱ぎ バッグから 焦って 出した
持参したスリッパに履きかえ中のワタク
シの背中に さっそく
冷水がかけられ
た みたいに
強い言葉が飛んで きてた …
… 留め直し ?
いま 往った方が良いのかな …
「 は ?
す いません ! 」
「 え ?
な に ? 」
「 はい ?
あ … 初めまして ?
本日から … 」
「 ちがう ! 」
「 ね ! " すいません ”
じゃなく て
" スミマセン ”
だ ・ け ・ ど !
瞳が茶色 ね あんた
日本語ワカラナイの ? 」
… え?…
ワタクシはビックリして 初対面の
カノジョを 見つめてしまい …
「 ヤメテよ !
" 睨まないで ” よ !
態度 悪ぅ !
や !
あ ! ねぇあんたさ?
あんたみたいなの
なんで 働く の ?
奥 様 の !
ひまつぶし ?
や ! だぁ⤴
どうせ いまさら
働き出しても
な~ん に も !
できないくせにね!」
「 いえ …」
「 え ?
" い え ”? そう ?
たいした自信ね !」
「 いえ ! そうでは
なくて です !」
「 ほら !
" 日本語 ” !
おかしい ! 」
「 スミマセン … 」
… そうなんだ …
上手く いか ない …
ワタクシは やっぱり ?
甘かったのでしょうか
この世の中を
ナメテいたのでしょうか …
… け ど ?
―
『 うるさい ぞ !
電話に声が入るだろ!
じゃま だ !
だまれ ! 』
… え ? …
" それが! ワタクシにとっての
運命のヒト との 遭遇 “
そぅ …
自分だって大声を出しながら
営業担当の ソノヒトは
ワタクシの前に すぅ~っと
さりげなく ? 立ち …
その広い胸 で
カノジョ と ワタクシ の
間に防音壁を作るように ?
クルッと 振り返る と!
ポカン! と 立ち竦むカノジョを
不機嫌そうに 睨みつけ !
" 登 場 ” した!
❀❁❀❁❀.❁
… あ … 強い な コノヒト …
… ペコリ …
ワタクシは頭を下げながら コノヒト
の 方へ 向き直した
「 スミマセン … 」
「 じゃない から!
あ ? 貴女は ?」
… え ? …
いま … 見てた んじゃ ない の?
ぅわ ! … コノヒトって 不思議ぃ …
なんで … それ 訊く の?
あ ! … それほど ?
その 大事なお話 の ?
お電話に 集中してたのかな …
そ … ここは
" お仕事の場 ” だもん ね …
… フフフッ♪
ワタクシは ソノヒトのおとぼけ顔に
ホッとして つい笑顔にな る …
「 ん ?」
「 あ はい !
初めまして
本日より営業事務
で入りました … 」
「 そうか !
待ってたんだ !
ヨロシク !」
「 はい!
宜しくお願いします 」
そして ソノヒトは営業担当らしく
爽やかな 微笑みを魅せてくれたし
ワタクシの腕を攫んで
引っ張り …
…スタスタスタ…
…ペタペタペタ…
ここの
皆さんに向かい …
「 おい ! なぁ ---
かわいい営業事務のコ
来たぞ !」
「 ぁ? の … 宜しく
お願いします!」
…ガタガタガタガタ…
「 よろしく! 」
「 宜しく! 」
「 よろ …」
…パチパチパチパチ
…パチパチ
パチパチパチ!…
… ぁ 良かった …
そして …
ワタクシは ここでの時間
( 主人が 顔を出さない日には )
その主人を忘れる事が できた し …
そ!
" とうとう 始まった ---!”
な のに …
―
第二新卒とも謂えないけれど
まだ 謙虚に頑張れる新人として
ワタクシは皆に歓迎された と
思っていた けど …
初日から こんなカンジで …
カノジョ …
その時だけ じゃなく
ワタクシの前に 度々 立った …
その カノジョ は
" インテリア担当 ” で ご契約済の
お客様に ここへ来場していただき
お部屋の仕様 色決め や オプション
品などを お客さまと打合せし カーテ
ンや 照明なども 一緒にご提案をする
それに …
営業事務のワタクシが入るまでの間
ここで 事務も兼務していた
仕事が " おできになる方 ” で
ワタクシよりも 年上
ですが … なので?
下の者には 手厳しく? なのかな
なぜか 最初から
全否定されてるような気が
これに … 合わせるのは …
どうしたら …
ワタクシは
悩み
だって …
平日のモデルハウス
来客の影がないと
ここでは
このカノジョの声が
響いていて …
「 あのさ … 事務で
入ったったんでしょ
この伝票チガウじゃん
" 雑費 ” !
" 消耗品費 ”!
チガイ! ワカラナイ の!
これじゃオチない よ!
やり直し!」
「 スミマセン … 」
―
「 あ の ね !
雑巾は ! 雑巾で !
テーブルの上を拭くのは
キッチンクロス !
台拭き ! で ! しょ!
あんた !! いくつなの?
小学生でも 判るけど !! 」
「 スミマセン … 」
―
「 やだ!
お茶出ししたら
すぐ ! チャッパ
捨てない !
まだ ! 何杯かは
とれるでしょ」
「 スミマセン … 」
―
「 ぁ------ あ !
イツマデ掃除してるの?
やってほしい事
それじゃぁー
ないんですけどぉ― !
" 事務 ”
なんででしょ !
は・や・くしてよ --- !」
「 スミマセン … 」
―
そして とうとう …
カノジョの 感情 ? は
仕事上の注意に留まらずに …
「 ね ! それで ?
なにもできないのに
給料もらうつもり ?
そもそも !
" 奥 様 ” なら
" 金 ” !
イラナイじゃん!
皆にさ " 申し訳
ございません “
て ! 頭下げて さ
" 寄 付 ” しなよ !」
「 スミマセン … 」
とかにまで発展し …
なんで ? こんなにまで も …
なの です が …
「 あ! 30前 !
だっけ ? デショ!
27 ? だっけ !
なのに! その聲!
べちゃべちゃさぁ !
耳に入っただけで
やぁあ---!
聴きたくない!
吐き気がする!」
「 スミマセン … 」
「 あのさ!
いつまで来るの ?
辞めればいいじゃん !
若くもないし !
とりえもない し !
帰れない ?
なら ! あの !
" 先生に ” !
" お迎え ” !?
来てもらえ ! ば?」
「・・・・・」
―
ワタクシは
カノジョの言いつけどおり
" あの車 ” での通勤を止めて
電車通勤にしてたの に?
… じゃない のかな …
… どうしたら 善いの? …
それに カノジョの声は
大きすぎて …
ここはモデルハウス の
14畳ほどの狭い事務室
その中で
皆さん 電話対応も
それぞれのお仕事もしていて
で … とうとう …
『 ガタっ!』
『 バサッ!』
また ? コノヒト …
ソノヒトは
勢いよく席を立つと
desk 上の ファイルを
カノジョの desk に
叩くように乗せ
『 おい !
いい加減にしろよ !
おまえ ! 見苦しいぞ !
何様だ!』
その投げ出されたファイルの表紙には
" 社外秘 ビジネスマナー 【展示場】”
の タイトルが あり …
ここは 狭い事務室 だから おのおの
席に着いて静かにしていたヒトタチも
それが 目に入った途端 嘲笑し …
その漏れた声が響く中 カノジョは顔が
真っ赤になる …
ワタクシも 驚き 立ち竦み …
… え ? ど し よ …
… アタフタ …
… キョロキョロ …
でも じゃないです? こんなに?
狭いところで こんなに派手にだと …
ここでは まだ ワタクシは
自分の置き場所がなく …
まだまだ そんな状態なのに
なのに … 思いっきり こっち寄りに
されてしまう と …
ワタクシも " この場 ” で
どうして善いのか分からず カノジョと
同じに 顔が真っ赤になり …
なんでだ か ? 恥ずかし くて …
… でも! シッカリしなきゃ! …
助けてもらったんだから!
「 … ありがとう
ございました 」
「 いや !こんな事
気にするな !」
「 な !」
―
そして …
ソノヒトはワタクシの肩を軽くたたき
事務室から出て 往き
残された? ここのヒトタチ は
もう 静かに … カノジョを含め
何事もなかった かの 様に手元を見な
がら自分の仕事に 戻って …
けれど …
やはり ここは …
支店よりも 狭く その支店や本社から
離れている から? なのか?
それとも …
ここの皆さんは 車で身軽に その間を
こまめに行き来している せいなのか?
こんな事でも?
噂は はやく そして …
広く ひろがっていく みたいで …
その数日後 …
ワタクシは まだ着任の挨拶もしていな
い それくらい ここには来ない?
ここの 責任者 に
呼ばれて …
―
スタスタスタ …
「 ぁあ お疲れさん …
ちょっと 君 いいかな … 」
❀❁❀❁❀.❁❀
「 … は?
あ ! お疲れ様です
初め まして …
いえ … スミマセン…
大丈夫です … 」
カタっ…
ワタクシは席を立ち …
皆は それぞれの仕事に忙しく
だから ワタクシは これを
だれにも ことわらず …
皆も こちらを見る事もなく
そのまま仕事を続けて
事務室に残っている なか
なので
その責任者の後へ続き …
スタスタスタ …
…パタパタパタ…
ここは モデルハウス で
その中は 接客スペースでも
" ときとして ” ここで働いている
者たちには 会議室の様に
…タタタタタタ…
…トコトコトコ…
2階の リビング横の
和室を使う事があって
ワタクシは …
ひとりだけ …
そこに連れていかれた …
…すぅ---
「 カタン…」
… ずりずりっ…
「 ま …
座ってさ … 」
「 はい … 」
責任者は 慣れたように スバヤク
自分のスリッパを 見る事も
揃える事 も なく入り …
ワタクシは それを 見たから
二組のスリッパを揃えて中に入り …
そこから ?
ずっと この責任者に
視られてる ! から …
なぜだか それに対し ?
ワタクシは警戒しながら ?
目立たないように ?
音を立てないように!
畳に正座して …
無垢板のローテーブルをはさんで
この責任者と向き合った
「 ん じゃ …
ね … どう ?
少しは 慣れた
かな ?」
「 あ …
いえ … 」
… なんだ ろ …
ワタクシは 鈍くて
全く 気づけ な い …
「 … そうか
貴方は どうして
働こうと思ったの ?」
「 … はい ?」
「 … ん
まぁ さ … 貴方が
気づいてるか ?
分からないからさ …」
「 は ? 」
ワタクシが
やっぱり 鈍くて ? …
「 やっぱさ …
違い過ぎるでしょ
貴方は さ
" あの方 ”
後ろにいるし
正直 やりにく い
と いうか さ …
ボクも 困ってて さ 」
「・・・・」
え ? …
ワタクシ じゃなくて ? …
主人が なにか した?
「 … なんか さ
ここの空気 ?
悪くなってるじゃない
貴方は なにも ?
してないかも
しれないけどさ …」
「・・・・」
あ … 後ろに主人 だか ら?
でもこれは ワタクシ の せ い …
ワタクシは
なにも 言い返せない …
そ …
周りの ヒト は
悪くない ね …
コノヒト は 責任者 で …
ここを纏めなければ ならない し
仕事では 皆に 結果を
出させなければ なら ないし …
ここの 成果 の
" 数 字 ” で 他に勝たなければ
ならな い し …
そ …
来たばかりの ワタクシにだって
そのくらいは 解って しまい …
この責任者が 仕事の邪魔になる
煩わしい事を 省きたいのも 判る
… でも …
自分勝手かもしれないけど
ここで 働きたい な …
あの家に 居るだけの生活は
ワタクシには
こうなってしまった ?
いま の ここよりも
居心地は 悪い か ら …
『 失礼しま --- す !』
「 バタ ン!」
ワタクシが返事を 早く!
するように と?
視界が狭くなる ように ?
しっかりと閉められていた
ふすまが 勢いよく開けられ …
あ … ふすまを閉めたのは
ワタクシだけれど … 閉めなきゃだし
それで 密室になっちゃってたし …
『 リーダー
これ !
あんまりじゃないですか !
このコ 来たばかりですよ
なにか 謂うなら
あいつにじゃないですか ?』
…キョトン
「 … え ?」
まだ 聴かされたまま
なにも返事をしていないの に ?
ワタクシは思わず そちらに目がいき
それにはこんな声を出してしま い …
… ダ ン!
云われた 責任者も 音を出すように
テーブルへ手をついて腰を浮かせ
「 ぁ⤴ あ ?
なんだぁ⤴ おまえ ? 」
『 ガタン!』
上司の威厳を見せたいの か ?
それは 払うような勢いで
だから 畳の上では
滑ってテーブルが 動いてしまい …
「 きゃ … 」
ワタクシは その大きな声で
思わず カラダが動き
壁際に 退 き …
それでも ? 気にせず ?
その勢いのまま
『 いつも
ちっさい事まで
じゃないですか !
いうんなら !
アッチ に 謂えよ !』
… バタン!
仁王立ちしたままでだし …
勢いよく開けたふすまの竪縁をまた勢い
よく戻して 柱にブツケ 音を 出し!
それで ?
自分の気持ちを ?
その音と激しさで表しながら
ソノヒトは 入って きた
… え ? ワタクシ ?
の ? ために な の ?
わざわ ざ ?
こんな 事 ま で ?
なんで ? してくれる の ? …
え ? だって … コノヒト …
仕事は ? いま これ って …
来ちゃっ て ? 大丈夫な の ?
ワタクシは 驚いた けど …
こんな事も思って しまって …
「 あ …スミマセン
ワタクシが
ご迷惑 を … 」
条件反射のような言葉しか出なくて …
だから か な?
『 は ? 違うだろ
いいから それ !
君は イインダぞ!
こんな事 謂われたら
怒って良いからな !』
チガ ウ … だって …
なんて ? 言っちゃった ら?
それやぁ 責任者とした ら?
「 は ?
なんだ ? 俺 か ?
おまえ なに
熱くなってるのぉ
うるせいな ~ 」
『 なんですかぁ!
だって
チガウじゃ
ないですかぁ ー 』
「 いいから !
" 下りろ ” よ !
なぁ ! いまの時間
" 架電 ” だろ!
おまえ 自分の
仕事しろ よ
関係ないだろ !
でしゃば る な 」
『 は ぁ~ ?
仕事は しますよ
でも ! ここの
雰囲気 ?
悪くしてる の
このコじゃ
ないですよね !』
… あ … でも …
きっと これ …
コノヒト も
皆も 解かって
くれてて も …
「 はぁ---?
なんだよ !
偉そうにほざくな !
ん? ぁあ?
おまえ ら ?
なんなんだ よ
デキテンノ か ぁ?」
… え ?
どうして ? …
ワタクシはその展開に
一瞬 固まり …
「 ぁあ ⤴
なんすかそれ !」
ソノヒトは眉間に力が入り …
その二人の 険しい表情が
イッペンに目に入ってきたワタクシは
… ぅ! わ … どうしよ !
これ って
ワタクシに 止められる の ? …
… オロオロ
ワタクシは 口が開いたまま
目をキョロキョロさせ
かなり おまぬけな顔のまま
立ち上がり
鋭い目つきで向き合ってる
怒っているせいか ?
こんなに滑る畳の上でも ?
踏ん張って いる !
大男な二人の 傍へ
… フラフラ
畳だから ? 滑りながら …
往こうとしていたけど …
それよりも
この二人の動きは速く …
「 あ ⁉
ワタクシタチは
なにも ! 」
言葉だけでもと
声は 発したけれど …
「 おっ !
" ワタクシたちは “
ってか ? 」
もぅ Switch が入った
この責任者は止まらず …
すっかり 悪役 ? に なって …
『 チっ ガ ! な ん!
なん ! すか ? 』
「 違いますよ !」
… ワタクシ は この上司を
" 悪 者 ” に しないためには
黙った方が良かったのかも知れない
けれど … それすらも解らず …
『 あ---- !
おまえらふたり けっ!
揃えるな うるせぇ!
いいか ! おまえら
俺の店で " ヤルナヨ! ”
ちっ ! だから
嫌なんだよ 主婦は さ!』
… え! やだ …
どうして ここまで ?
なる の ? か な …
「 ヒ ど … 」
それ を …
聞き流せばよかったのに?
ワタクシは そんな言葉に
思わず 反応して 声を出してしまい
で … だけど …
コノヒトに ワタクシの そんな声
届かなければ 良かったの に …
聴こえちゃったから また ?
" 気遣い ” させて しまっ て …
こんな に ?
ここ で ?
そもそも ? 直接 は
カノジョと ワタクシの問題に
関係ない 二人なの に ?
言い争い ? が
起こっ て …
しまう し …
ソシタラ もぅ!
たとえ ! ここが仕事場でも ?
たとえ ! それぞれ が
" 接客のため ” の
スーツで身を包んでいて も ?
二人の男が こんな
言い争いを続ければ
そ?
そうな っちぁぅ って ? …
『 お い!』
ソノヒトは 腕を 伸ば し …
もう 上司も部下も なく
止まらな かった …
「 ばさっ ! 」
… ぐらっ
『 ド スン ! 』
『 きゃ--------!』
『 て めぇ ! 』
『 なんすか! 』
…ドシン!
…ドシン!
「 ガタン !」
…ドシン!
『 てめーら
くそ が ! 』
『 うるせー ! 』
…ドシン!
…ドシン!
… やめてください!
「 … や め!
って … 」
…ドシン!
…ドシン!
…ダダ!
…バサッ!
… ガっ! " バシっ ン! ”…
… ドっ!
ス ン!…
「 … っつ !」
… ダッ ン!
… ガタン!
… ダッ! ダダッ ダッ …
「 ・・・・ 」
「 ・・・・ 」
… ぁ …
―
そう …
上司を殴った ソノヒト と
ものわかりのワルイ ワタクシ は
呆然と 立ちすく み …
殴られた けっして悪くない
大人な 上司の ここの責任者 は
テーブルを蹴って
この場から 転がり出るように
離れ 階段を駆け下りて行った …
「 ・・・・ 」
「 ・・・・ 」
… ぅ …
ワタクシは
血の気がひき …
❀❁❀❁❀.❁❀❁
でも …
不謹慎 かもだけど …
ワタクシ いま
目が覚める?
生きて る?
なんか …
人間ポイ ? 気がして …
… 変だけど
和室はそんなに広くないから
目の前で こんな事 あったら
コノヒトの 声だけでなく
息づかい 匂い 体温
伝わってくるし …
人間味 ? みたいなの
あって …
だから ドキドキも
してた かも …
それくらい 今までの ワタクシの
周りとは ここは
コノヒトは
ゼンゼン 違ってた …
それでも
これは …
" 大変 !”
「 あ
大丈夫なんですか?
これって? 」
「・・・・」
「 … あ の 」
「 … 大丈夫
あのヒトは
大学の先輩だ 」
「 … え ?
だったらなおさら …」
「 … ん
俺を敵にはしないから
いい … 今月
数字出せば平気 」
「 … そ う
なんです ? 」
「 ぁあ 今月確定
契約 2 本あるから 」
… す ごい …
ソノヒトは 赤く なってしまった
右手の指を2本たて ワタクシに魅せた
「 あ 手!
痛かったですよね…」
「 ん ?
大丈夫 … 」
ワタクシは
ソノヒトの赤くなった掌を
いつの間にか 両手 で 包んでいた
「 っふ …
君の手
柔らかいな … 」
… どきっ
「 … あ
いえ スミマセン 」
「 … いや
も 仕事に戻ろうな 」
「 はい … 」
ソノヒト と 一緒に 1階に下り
事務所へ入ると リーダーは もう
居なくなって …
いつも
ワタクシに 嫌味ばかり謂っていた
カノジョは モデルの中の インテリア
コーナーで 色合わせの仕事をしていて
居ない
そして … それも ?
ちゃんと
確認したかのように ?
一緒に戻った ソノヒトも
お客様のお宅へ訪問する
アポを取っていたらしく 時間を
気に しながら 急いで出て 往った
―
それ な ら …
さっきの事 を 知ってるのは …
ワタクシは
そんなことを気にしていた
インテリアはカノジョだけ だけど
営業担当は リーダーとソノヒトの
他に数名 ここには席があって …
も …
カレラは 居なかった
皆が
気遣いをしてくれたのかな …
でも …
ワタクシが ここに来なければ
こんな事は ?
ここでは 起こらなかった …
ワタクシは 事務室で
ポツンと ひとりに なって …
… " ワタシ ” …
ここにいて 善いのかな …
ワタシは " ワタクシ ”の 余裕は
もう 全く なくなっていた
ここのヒトタチは
きっと リーダーや
カノジョが云っていた とおり
ワタシの後ろに居る主人が
ウットオシクテ
ワタシの扱いに
ワズラワシサ を
感じているの だろう
との事 は
分かる から …
ワタシが居なければ
カノジョだって こんなふうに
なっていなかった と 思う し
リーダーが ワタシにだけ
話をしたの なら
" 数字を出せる ”
インテリア担当のカノジョは戦力で
営業事務の代わりは
いくらでも すぐに …
なのかな …
でも …
―
ワタシが
ドンヨリしながらも今日の仕事を終
わらせ モデルハウスから出ようと
裏口に進むと そのタイミング で
… パタン!
扉が開き
ソノヒトが 戻ってきた …
「 あ!」
「 ん!」
… それは素早く …
ソノヒトは
ワタシの 唇に 自分の人さし指をあて
口をふさぐと 左腕で ワタシを
引っ張り!
そのまま
黙って 歩き出す …
少し 離れた処で …
「 お疲れさん …
あの後は 大変だったかなぁ
俺 スグ 出たけど
大丈夫だった のか ? 」
ソノヒトは 止まることなく でも
きっと ワタシの速さに合わせて ?
早くもなく 遅くもなく歩き 続け …
それでも
戸惑うワタシの 緊張したままの腕を
強めの力で 離さずに引っ張りながら
営業車の留まる 駐車場の方へ進み …
そんなに ? ワタシを
心配していた感を出して い て …
そこは … 来客用とは違い
整地もされていない 空き地を
利用した駐車場 で 大きめの 砂利が
目立つ 歩きにくいところで …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
… どうして
ワタシ 連れてくの ?
ワタシは
引っ張られながら その腕を
振り払う事も できずに …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 あ! 今日は
ワタシのせいで
スミマセン … 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 ん ?
" わたし ” か … 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ!
… え! 気づく の?
…ジャリ
「 … あ いえ
スミマセン … 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 ふっ !
イイじゃん
べつに どっちだって
同じ だから …」
…ジャリ
…ジャリ
―
…ジャリ!
…ジャリ
「 え ?
はい … 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 で ?
大丈夫だった ? 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ!
…ジャリ
「 はい …」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 そか …」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 はい …」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 … 辞める な よ …」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ!
… な! に?
…ジャリ
「 え ?」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 う … ん …
考えすぎなくていいぞ …
ここの 人間 さ
悪い人たちじゃない …
皆 〆日 近いと
いろいろ さ … 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 あ …
そうですよ ね …」
そう …
皆さん
リーダーだけじゃなく " 数字 ”
ここのため にも 自分のため にも
気にして お仕事なさってる から …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 な …
電車通勤に
変えただ ろ ?」
… え? 知ってる の?
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 はい 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 送ってくからさ !」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…! なんで ?
「 は ?
で も !」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 大丈夫
ミラレテないだろ ?」
… え? チガ!…
" ミラレテないだろ ?”
じゃなくて! いきなり ?
なんで ? そうなるの ?
そ? … だからここなのかも ?
だけど …
え ? さっき から?
ううん … あの とき から ?
どうして ? こうなるの か?
ワタシには ゼンゼン だけど …
… コノヒト て ? …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャ リ
❀❁❀❁❀.❁❀❁❀
「 い ?
そう ? です?」
… でも …
なんか? 旨く訊けないから
それも これも ?
わかってる? ふりシナキャ!
とりあえず 話!合わせなきゃ!
いま ! そう ! いま は!
助けてくれてばかりの ? コノヒト
に 対しては!
失礼にならないように …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 ぁあ … も 暗いし
リーダーの車は
ないし
戻ってくるかも
だけど
ほかのヤツラの
車もない 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 そ ? なん?
です ね? 」
… コノヒト って ?
よく 視てる …
回転が 早ぃ ?
すご い な …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
「 ぁあ … 」
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
そして …
こんな?会話は続いて …
コノヒト 静かに話すけど …
そう 云いながら も …
いつまでも しっかり
ワタシの腕 zutto…
離さなかった …
それは
二の腕を攫まれていただけ ? で
" テツナギ ” では
なかったけれど
それは …
強く 離される ことは なく
だから …
緩められることはなくて
で 迷いがなくて ?
なら …
頼もしく て …
そう …
思えちゃって
バカみたいにワタシ勝手に
胸が ドキドキして た
だから!
… すごぉ …
皆さんの車 把握 してるんだ …
ワタシは …
それでも てれくさ くて?
それとも 違う ? と 思うけど
" 理性 ” ってやつ で?
だからだから!
自分で 自分の
そんな気持ちをゴマカスように
チガウ! ことを?
無理やり?
頭に出してみて …
… だって 正直 ワタシ
大学を出てから
スグに " 先生 ” と結婚したし
学生時代も㊚のヒトと お付き合い
も したことない し
もし
そんなお付き合いがあったら
オトコノヒト に
" 腕を引っ張られる ”
なんて 普通で? ゼンゼン
大した事でも? ないのかも だし?
でも …
… なんで ?
まだ …
そんなに親しくないはずなのに?
あんなことに なって?
こんな こと されて?
え ?
コノヒト 大丈夫な ヒト ?
―
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
ワタシは いま も?
かばって もらって る?
コノヒトに 感謝 ?
するどころでは なく
むしろ
警戒心も 出て きて …
だから?…
こんなに いろいろ されちゃうと
ワタシ 冷静 じゃない けど?
なぜか? 冷めてて?
でも 不思議 で?
いまも どこを 見て
良いのかも
分からなくて …
足元の 大きな砂利見ながら …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
それでも !
そんなワタシのすぐ傍に ソノヒト
居るのに ?
そうだよ!
ワタシは 急に!
思い出したように
顔ごとブンブン! 動かすほどの
オーバーリアクションで
キョロキョㇿ キョドって …
ワタシ ヒトの眼?
気にし た …
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
…ジャリ
で! その
" ヒトの眼 ”
気にして?
…ぴ!
…カチャ!
…パタン!
「 どうぞ!」
「 は ? い …」
…ジャリ
…ジャリ
…カチャ!
… パタン
まるで ?
これも条件反射の様に?
ソノヒトが
そう声をかけた 瞬間に!
… あ! …
って?
" 焦って!”
ソノヒトの車に
ストン! って
逃げ込むように
頭から突っ込んで!
乗り込んじゃって …
「 あ …」
「 フフっ
… うん !
いいじゃん …」
…すぅ~
… カチャ …
… え ? コノヒト慣れてる? …
ワタシが キョトンとしてるから?
上体を傾け あっさりワタシの肩に
左手を掛けて もう動けない!
できない ? ワタシのために ?
シートベルトをセットした …
―
… え ? チガ ウ ?
これって ? これで ?
ワタシ 逃げ れた の?
え ? やっぱ ?
乗った方が ダメなんじゃないの?
ん ? ワタシ ? が ヘン ?
コノヒトが 変 ?
判らないままなのに ?
「 なぁ …
住所 言って
ルート
見るからさ 」
「 !
ぁ … の …」
… んんん ?
善いの かな これって …
ワタシは いつの間にか?
コノヒトにされるがまま ?
シートベルトに捕まったまま ? …
ぇ----! なんで ?
乗っちゃったんだろ ?
ぁ----!
もぉ----!
コノヒト! なんでも ?
早く ? 物事 ? 決めて
すぐ 動くけど ? ワタシ
これじゃぁ 頭 混乱してばかりで
考えとか 追いつかない …
無理 ! ゼンゼン 早くて …
あ … 今月 2つ
も だし …
自信 あるんだ …
コノヒトに は…
それじゃぁ …
ワタシ …
こんなに どんどん
コノヒトに 引き込まれ る …
「 …ぅ!」
「 ん ? 」
❀❁❀❁❀.❁❀❁❀❁.
ワタシは
受け身な性格が禍いして ?
さっきから なにも訊けずに
何も言い返せずに コノヒトと
一緒に動いてる けど
ホント 善いのかな ? これ …
「 え ?
だって 言ってくれなきゃ
送れないじゃん … 」
はぁあ ? … コノヒト …
そう か …
ワタシの頭はいつも 空っぽで
いまは取っ散らかって ? だけど …
そ …
なんかきっと …
コノヒトの頭には
ぎゅぅ ! って いっぱい !
ありとあらゆるもの ! が
キチン! と 整理整頓されて て?
その場その場で どんな事が起こっても
ちゃんと 巧くできるよう に?
" 機転 ” スグに取り出せるように!
無駄なく 何層にもなって
詰まって そ う …
そ … なのか な
まだよくコノヒト知らないけど …
フフッ♪ これ …
なんだか 助けてもらったから ?
ずいぶん ひいき目 ? かな …
「 ぁ !
そ ! ですよね
スミマセン
横浜市 … 」
「 ぅお !
あそこか ?
ほん とぉ !
すげーんだな--- !」
「 ぃえ …
ワタシの物じゃ
ありませんし … 」
… そ … だし …
" 主人の ” だし …
で … コノヒト たぶん
この 声のトーンでも ?
ワタシの 気持ち ? まで
" 慮る ” …
「 ん ?
まぁ … な …
でも …
あそこは
車ならいいけど
電車だと …
大変だな …」
ん ?
… え ? この住所 ?
聴いただけでそれ判るん だ …
そ ? れは … さすが営業担当 ? …
いつも車で動いてる し ? …
―
でもほんと
ワタシが暮らしている処は
お仕事の時間管理はご自分たちで
できる 選ばれた方々が暮らす処で
だから
電車通勤など ? する方はいなくって
ワタシも最初は 車通勤をできる と
思って それ以外は なにも考えていな
かったけれど …
あのトキ 云われた から
それからは 電車通勤に変えていて …
" 最寄り駅 ” の 言葉が合うのかも
分からないくらい 自宅からその駅まで
は遠く バスも利用してからだし
そのバス停までだって
家は山の上だから急な勾配の道は
下ったり上ったりも大変で …
実は かなり
不便さに驚いていたの
だけれど …
ワタシの事なんて … で
誰にも 相談していなかった
だから …
気づいてくれたのは …
嬉しい …
「 … はい
でも …
ワタシは
戦力外の
事務なので … 」
「 ん ?
なことないだろ ?
大変なのは!
な ?
俺 ! 迎えに往くよ
朝もさ … 」
「 は ?」
「 うん !
そ ! 大丈夫
だから !」
「 ・・・… 」
… なん で ? …
そ なる ? かな …
それでも …
ワタシは 解りやすいのか な
声に出さなくても コノヒト …
「 あ …
そんなに驚くなよ
通り道だからさ … 」
… え ? だって ? それだって ?
そなのかな ? それ …
世間は ? これ 平気な事なの ? …
ぁ… " 世 間 ? ”
ワタシは 突然の事で
なにを基準に ?
考えたら善いのか が?
分からなかった
でも …
そ … か …
昔 … 送ってもらってた な …
車で … 先生に …
なら … 同じ職場のヒトに?
車で送ってもらったり?
朝 乗せてってもらったり って?
普通なのかな? 通り道って?
云ってるし … んんん?
―
「 でも … 」
「 おいおい ?
考え込むなよ ?
タイシタコト
じゃないだろ ?
" 通り道 ” だぞ …」
「 … は ? ぃ … 」
そして …
その日から ソノヒトとワタシは
一緒に 通勤することになった …
「 おはよー
ございまーす! 」
…パタン!
「 おは よー 」
ワタシは 車に乗ってから
カップホルダーに コーヒーを置き …
「 甘い方が良いですか ? 」
「 お ?
ありがとー
甘くなくて良い …」
… よかったぁ! …
何をしたら 失礼になるのか分からない
けれど 乗せて頂いたから 飲み物を用
意して みた
ソノヒトは すぐ車を動かし それには
手をつけ なかった
… あ ?
これ 嫌だったのかな …
ワタシは 心配になり 少し 俯き加減
で だから前も 見れないけれど
ソノヒトに尋ねる事もできなくて
横に静かに座ってた
で … 車も ?
とても静かに動いていた
… この車って …
社用車か分からないけれど 普通の車で
エンジン音もうるさくなくて
… 自己主張しない車 …
いいな …
このほうが すき …
それに …
コノヒトは営業担当だから ?
お客様を乗せる事もあるから ヒトに
優しい運転ができるのかも だけど
… カタン …
「 じゃ !
いただきます !」
「 え?
あ? どうぞ …」
… よかったぁ 飲んでくれる?
「 ん !
美味いな !
これ ? モカ
か ? 」
「 あ ?
はい … 」
… やさしいぃ聲 フフッ♪
この笑顔も す きぃ…
手をつけてもらえないと思っていたから
こんな事にも ワタシ
ビックリ?して …
肯く事しかできなかったけど
家から少し離れた
信号待ちの停車中
ソノヒトは ようやく 少し冷めた
コーヒーに口をつけてくれた …
… ご くぅ り …
大きなノドボトケ? が 動いて …
!あ … また飲んだ? …
気に入ってくれたのか な …
ワタシは
主人に 入れて " 上げた ”
事はなかったのに …
なんだか …
ソノヒトのためなら って
昨日から
コーヒー豆をチェックしてた …
だから …
ちゃんと飲んでくれたのなら
ワタシ … 胸が また勝手に
ドキドキ しちゃって
ワタシも 嬉しい …
「 冷めちゃいました?」
「 いや ?
俺 熱い飲み物
苦手だか ら … 」
「 え ?
スミマセン
知らなくて … 」
… 猫舌? かわいい な !
「 はは ! だよな!
知らないよな!
でも …
ちょうど ! 善かった
ほんと!
美味いよ!」
… ほ ん と !
って そ か な ?…
…ドキドキ
「 あ!
よ … かったぁ です 」
「 ん! 」
… 良かったぁ---!…
「 ん … な !
なんて
呼んだらいい ?」
「 え ?」
「 呼び方!
下の名前に?
する?」
… どきっ!
… え ? これって?
どうする? ぇえと … 主人 は …
ワタシが
考え込んだ仕草を見せると?
『 お い !
ゆ き !! 』
『 はぁ! い! ぃ? 』
… ぁ うそ ! ひどぉ !…
ワタシは自分の手で
口を 押え…
「 … ふ!
じゃ! " ゆ き ”
で な !」
云われても?
顎を引いて目がキョロキョロし
そのワタシの様子に
ニヤニヤと
フフッ! 鼻で笑って
コノヒトは また
先に 決めてしまい …
…ドキドキドキ
「 … はぃ…」
… ンンン?
でも … なんだ ろ …
嫌じゃない …
呼び捨てに されたの に …
こんな事 主人の聲 じゃなくても?
ワタシ … 嫌じゃないんだ …
!… あ…
ワタシ さっきから " 主人 ” って
頭の中で は 謂いながら でも
謂ってるだけで …
その顔すら出てこない
ワタシ 主人を ? 忘れてる …
忘れる事 できて る …
❀❁❀❁❀.❁❀❁❀❁.❀
… え ? … そんなに ? この
ひととき ? 楽しい かな ? …
それに!
なんだか …
驚いてばかりだな ワタシ …
―
「 な! でさ! 俺は年上だから
" 落合さん ” だけど …
これから
ふたりの時は
それじゃ硬すぎるから
ゆきも 下の名だし
俺 " 慎 ” だけど … 」
「 い? ぇ!
呼び捨てなんて
できませんよ!
先輩だし!
年上だし!」
「 そうか ?」
「 はい!
じゃ ?
" 慎さん ” ですか?」
「 ん ?
なんか ?
くすぐったい 」
「 え !?
じゃ! やっぱり!
" 落合さん ”
ですよ !」
… 当たり前じゃん ! なんで?
先輩なのに? 下の名前なのよ?
オカシイじゃん !…
「 ん … そうか …
じゃ … さ …
" シン ” で
いいぞ!」
… え ? なんで ?
あ れ … " まことさん ”
なのに ? … ん ? あ …
" 慎 ” の 名前 で 多い ?
" シン ” が 良いのかな ?…
「 " シ ン ” ?」
「 お !
いいね !
そ ! それ ! 」
「 え ?
シ ? ン ? です?」
「 ぉう !」
「 … は ぃ … 」
… そ う? なん だ …
なんか … これ … ふたりだけの ?
かな …
そんなカンジで さすが なのは 営業
担当な ? " シン ” は こんな
お互いの呼び方だけの話題で?
それでも ずっと会話は続き あっと
いう間に 展示場に着いた
でも …
シン は そこから少し離れ
た処で ワタシを降ろす
そこは 食品などの買い物をする
" スーパー ” で ?
ん ?
… どうしてだろ …
「 な !
この店 ! 駐車場 " 無料ナンダ ”
で ! 遅くまで営業してるし…
ん! しかも !
年中無休 ! だから な !
ここで落ち合えば 善いだろ ?」
あ … さ すが です …
「 は … ぃ 」
「 ん ! で !
俺 お客様のトコ往ったりだから
帰りは 18時45分!
店の入り口 横!
イートイン! 寒かったりしたら
そこからも外! 見えるだろ?
じゃあ な!」
… パタン!
「 あ !
ありがと … 」
シンは ワザワザ だった …
展示場に来なくても良かったのに
ワタシのために 寄ってくれた …
それに ワタシはちゃんとお礼を言えな
かったのに 帰りの事まで シンは云っ
て くれて …
その 段取りの良さ ? に ワタシは
また 驚いた …
… なんで ? …
そんなに ? …
それでも ワタシは シンに云われた
とおり
仕事を終えると 18時30分の
少し前には 店に着き コーヒーを
買って シンを待っていた …
―
…ヒューン…
「 あ ! キタ ! 」
ワタシは 車を見つけると
駐車場に向かって走り出す
…パタン!
「 お ! お疲れ ! 」
「 お疲れ様です 」
…ストン!
…パタン!
「 あ の …
宜しかったらコーヒー
冷ましておきました 」
「 ん ? 」
「 いかがですか? 」
「 お!
いただき ! 」
…ゴクっ!
シンは スグに
そのコーヒーに口をつけた
「 ん ?
ちょうど良いな ! 」
… ほっ!
「 良かったです!」
「 お !」
「 でも … お忙しいのに
送っていただいて … 」
「 ん ?
気にしてるのか ? 」
「・・・・・」
シンは 向きを変え すぅ~ッと長い腕
を伸ばし …
…頭ポンポン! って ?
「 え ? 」
その動きで シンの 匂い …
が カーエアコンの風に乗って
こちらに流れてきて …
ワタシは 一瞬で
それに包みこまれ …
術にかかったように
ぼんやり する …
「 ふっ !
気にするなよ !
俺が云ったんだろ !」
「・・・・」
ワタシは てれくさくて
眉間に眉が寄り
「 なんだ ?
そんなにか ? 」
「 あ いえ !
スミマセン !」
「 … ふっ !
ゆきは
謝ってばかりだな 」
「 え ?
ぃえ … 」
… やさしいなぁ …
" 気にするなよ!” って
気にしてくれる …
「 俺は 楽しいからさ !
ゆきは カワイイ
からな !」
「 は ?」
ワタシが その一言に
驚いて首を傾げると
そう云いながら シンは
右手をハンドルに で … だから
カラダは前に向いてる し …
一定の距離は保ったまま でも ?
左手で ワタシの 右耳の
ミミタブを優しく つま む …
「 きゃ!」
「 そ !
思ってるだろ ?」
「 え ?
思ってません ! 」
ワタシは 耳を摘ままれたまま?
じゃ 恥ずかしくて
シンの方を ミレナイけど
だけ ど …
耳に繋がってるシンの手を
払えない …
それでも …
え … なに謂ってるの ?
ワタシはそんなに
自信過剰じゃない
けど ! …
「 そ ? か ? 」
「 はい !
ワタシそんなこと !」
ワタシは この顔が
キライ! だって この顔のせいで
ワタシは …
「 ん ! 解った
悪かったな ! でも
俺は ゆきの事
イイと思ってる 」
「・・・・」
… だから それ は やだ …
「 ふっ !
ソウイウとこ ん!
温かくなってきたな …」
「 え ? 」
「 耳 …
柔らかい ミミタブ
ゆきの唇と 同じだろ
柔らかい な …」
ん ? … なに ? 何 謂ってるの?
い や! なにを 思った の?…
え ? それ …
Kiss かな … kiss ? やだ!
ワタシったら うそ! …
―
ワタシは 混乱して
両目はおっきくなり …
… ドキドキドキ …
「 … な !
連絡方法 !
ド する ?」
「 あ … 」
それなのに?
❀❁❀❁❀.❁❀❁❀❁.❀❁
シンは もう あっさり?
… 繋がってた のに …
すぅ~っと その手をはなすと 今度は
ハンドルに右片肘をつき 斜めになると
右手の握りこぶしを自分の右頬に当て
左手は 腰に当て?
―――――――――――――――――
ワタシは いま 車の中で …
だから?
フロントガラスや
サイドウインドウから
外は見えるはずなのに ?
だけど ?
そんな ほか を 見る事もなく
シンだけを見て いて …
だって ふたりだけの ここ
だから で …
―――――――――――――――――
… ん ? これ … で ?
考えるポーズ ? で …
あ … その右手 大きい な …
あの時 リーダーを殴った右手 …
… ワタシなんかのために
コノヒト …
いまは …
ワタシの表情を確かめる様に ?
安心させるように ? だから ?
ニコニコ顔で
低い姿勢になって 下から
見上げるように覗き込 む …
…じぃ---
ぅ …
" み! みられてる!”
ワタシだって シンを見てるけど
見られるのは やだな …
だって …
そんな カンジ! 出すのやめてよ!
よけいに 恥ずかしいじゃん!
え ? … で も … も ?
話し変えた の ?
なんか … やっぱ 解ったのかな
ん ? ワタシ …
からかわれてる の これ ?
も-------!
あ ?
シン に は …
ワタ シ …
こんなカンジで驚かされるから ?
こんなに ドキドキするのかな …
や ! やば ぃ …
これ きんちょう す るぅ …
… ワタシ これ なにも口に出せない
し? で 頭の中で パニク る
―
「 … ん ?
メッセージにする ?
それとも電話か ? 」
ぅ … このまま ?
話 進め る ?
でも … これ … やっぱ …
「 あの …」
「 ん …」
「 主人 が … 」
「 スマホチェックするのか ? 」
そ ? … わかるんだ …
「・・・・」
「 そか … なら
メッセージにしようか 」
「 え ?」
… どうして ? ん ? 電話の方が
履歴だけで 内容までは分からないの
に? …
「 ん … あのさ 例えば … な
" 書類 “ を 頭に さ
『 書類は15分ほど
遅くなります 』
とかさ … 」
「 ん ? 」
… そか ! へぇ … それなら …
判らないかも …
「 どだ ? 」
「 う … ん 」
…ウ~ン
「 それに …
時間は18時 だと
オカシイから 10とって
8時とかにする … 」
… ぇ--- ! ぁ …
…ウン
「 は … ぃ 」
「 だから …
『 8時45分の書類作成は
難しいので
30分遅れになります 』
とかさ … 」
ぅ---- わ!
… す ご …
こういうとこ ? ワタシには無理 !
なんで こんな事 思いつくんだろ …
フフッ! おもしろい!
シン …
なんでもできちゃって!
なんか 堂々としていて ?
だから 頼りになる ? 安心する ?
フフッ …
「 … はぃ 」
「 で !そんなカンジで
遅くなる時もあるけど
それなら早めに連絡するから
モデルで 時間つぶしてㇿ! 」
へ ?
… なるほ ど …
…ウンウン
「 はぃ …」
「 ん ? だろ ?
" 完 璧 ” だ な ! 」
… え ? そんなに ?
なんでも 自信家 ? な シンは
両手でハンドルを握ると
前へ向き直し 得意そうに ?
胸を張る …
…フフフッ♪
「 … はい
完璧です… 」
ウンウン♪ … なんでか このカンジ
子供みたい ? ぽい ?
やっぱ おもしろ い!
… ウン♪ ワタシ も …
シンとお話し するの 楽しい!
フフフㇷ♪
―――――――――――――――――
… そ だ よ これ …
ワタシタチ お話し してた
だけ なのに ね …
それだけなの に …
それなのに ? これ …
主人 は どうして分かったんだろ
で これ ? そんなに怒る の ?……
―――――――――――――――――
ワタシは ただ シンをみつめて
その話 相槌を打って 聴いてる だけ
だったけど …
でも … 心地よかったし ゼンゼン
嫌じゃない 無理もしていない
シンは 年上だけど まだ 結婚で
縛られて? なくて ワタシの事なんて
理解してもらえないと思っていたのに
なんだか …
理解してくれて る …
って 安心できてた から …
―
でも …
これも? 営業担当だからかな …
きっと お客様を乗せてる時も
退屈させないように ? セールスの
ために? ずっと
会話は続いてるんだろな …
ワタシは 自分を取り戻そうと?
少し 冷静に?
こんなふうに なんて も 思った
―
「 ……で さ ? 」
「 あ ? 」
「 ん ?
聞いてなかったか ?」
「 ぃ え 」
「 ん …
大丈夫だったか
今日は … 」
「 はい …
なにも … 」
「 そか … 」
「 あの …
ワタシ
やっぱ … 」
「 ん ? 」
… ワタシは 自分で言って
後悔した 訊くのが恐い …
「 なんだ ? あ !
まだ? 気にしてるのか
それ ! って …
『 私なんかが
ほんとにここで働いてて
善いんでしょうか ! 』
とか か ?」
シンは早口で言い切って魅せる
… どきッ
… ど? して? 判るんだろ …
「 あ ! の !
なんで … 」
「 ん ?
顔に書いてある 」
「 え ? 」
… ジタバタ !
ワタシは両手で顔を隠し
俯いて 固まる
「 ハハハハハ !
" 純 ” だな !
だからさ !
気にするナッテ !
な ! そういうとこ !
やっぱ !
カワイイじゃん 」
… や ! ハズ ぃ! …
「 え ?
ひ どぉ ! 」
「 ふっ !
だろ ! 」
… 気を遣われたのかな?
" だろ ” って
解ってもらえてるの ?
かな こんな ワタシなのに …
「 ……じゃん! 」
「 え ? 」
「 『 " え ? ” 』って ?
大丈夫ぅか ? あ!
腹 減ってんのか ?
な ! なら なんか
喰ってくか?」
「 ぃ ? え! 」
… それ は いくらなんでも …
シンは そうやって スグに?
ワタシのこと を みて くれて …
❀❁❀❁❀.❁❀❁❀❁.❀❁❀
「 いきなり かぁ ?
じゃ! 送るだけな !」
「・・・・・」
… なんだろ? これ … 会話 ?
それでも成立して る …
シンて ホント 不思議ぃ …
でも… いいなぁ このカンジ …
で? ワタシは そんなシンに
ぼぉー っと してる間に?
あっという間? に …
…ヒューン
「 お疲れ ! 」
「 ありがとうございました!」
「 ん !
じゃ 明日!」
「… はい 」
…パタン!
…ヒューン
それでも !
" ムフフ ♪ ” って!
ワタシは判り易く
楽しかったから!
明るい表情のまま?
自分の足元だけを見て 家に入り …
…トコトコトコ…
… パタン !
だったのに? でも!
「 お帰り … 」
「 っく ! 」
… ⁉ ど う して ? …
だから 罰が当たったのか …
主人が !
や! … なんで? …
ワタシを 玄関で ? 出迎え? た!
それは!
主人の 初めての 出迎え で …
ワタシは見事に そこで固まっ た …
「 … た だいま 」
ワタシは また 分かり易く
スグに俯き 床を目で追い
自分の? 家なのに?
初めての場所の様に確認するように
ゆっくりと進み …
だから そちらが重要で!
なので
主人から目を 逸らした …
…くるっ!
主人は?
そんな ワタシを待たずに
どんどん 離れて あっさり リビング
の方へ消えて往く …
え?… なにも云わないの ? あれ …
なんで? なら?
車 見えて ? なかったのかな …
じゃ … なんで 出迎えたの ?
… トボトボトボ…
ワタシはルームシューズに履き替え
不気味な …
主人を探すようにリビングに入って往く
… いない ?
すっかり? もう?
主人は リビングには いなかった
… なに ? これ …
… 恐い …
静かなリビングに ポツンと 佇み
ワタシは 一瞬で
背中から 凍る
―――――――――――――――――
それくらい 主人とワタシの関係は
上下関係が ハッキリとしていて …
… どうせ …
ペット だか ら …
ワタシからは
主人には 話しかけない
ここでの生活は
こんな時にも
こうして 困る …
普通の夫婦なら ?
こんなとき …
離れる 夫を追って …
自分から 言い訳 ?
探りを入れる ?
のかな …
ワタシは それも できず に
主人が動くのを ただ 待つ …
たから 凍りついたまま
震えても で も しかたなくって
すごく 怖い …
―――――――――――――――――
主人はあの大国 北の国の大統領みたい
冷たい 鉄のような ヒト …
いつも …
だからこんなときも不気味に
家の中は 静か で …
… 冷えきってる
でも … なんで判ったんだろ
誰かが ? 主人に知らせたの ?
ワタシは これ 判らないけど
一応は考えてみて…
だって …
主人が ? ワタシを ? 待つ ?
なんて オカシ い し
『 え? まさ か!』
… あ ? もしかしてカ ノ ジョ …
かな… って?…
だって?…
だから ね?…
あんなに 初日から
ワタシにキツク …
それに …
主人の こと だって!
" 先生 “ って
言ってたの あそこ では
カノジョだけだった し …
ワタシの車 を
知っていたのだって?
そう じゃない?
まさか ? " あれ ” も …
主人 ? が カノジョに ?
やらせてた の ?
ワタシが あそこを ?
辞めるよう に ?
だから あそこに は
カノジョが居るから?
主人 来なくなっ た の ?
あ … じゃぁ! カノジョが云ってた
きつい捨て台詞も 主人が?
あれ … 普段 ? の?
ん ? そ ? ココでの生活
毎日 …
ワタシが 主人に なにも " 感謝 ” ?
しないから?
アノ カノジョの言葉は 主人が
カノジョに 云っていた " 事 ” ?
なのか も …
そうな の?
あれは さ …
主人の ワタシへの " 不満 ” なの?
―――――――――――――――――
そうなの かな?
ワタシは頭の中がグルグルとして …
焦点もあわせられずに …
… もう ヤダ-----!
いま ここに 独りきり に され
てて も
なにも かも?
見透かされているような
そう ! いまだって !
視られて る !
気が す る …
―――――――――――――――――
こんなときに?
主人は ずっと
書斎から出てこない
だから ワタシは
いろいろと詮索しながら
リビングのソファに腰かけて
主人を 待ってい た
けど
そのまま寝てしまい …
そして … そのまま迎えた 朝 …
… あ? いけない …
ワタシはソファで目覚めると
目の前のテーブルには
カットフルーツボートと
ヨーグルトが置いてあって
この家に生活していて
初めて
食事を用意してくれてる
ヒト が
ワタシの目の前にいた …
―――――――――――――――――
㊛「 どうぞ
召し上がっていてください
只今 お飲み物も
お持ち致しますので 」
「 あ !
ありがとう
じゃ …
食事は良いので
温かいお茶 を
をください 」
㊛「 承知しました 」
…カタン!
そのお茶はスグに出された …
… まだ 寝ぼけてる ワタシ …
…カチャ
ワタシはそのカップに両手を伸ばし
スグに 口をつけた
だから ? …
そこからの意識は 飛んで ?
…ピーポー
…ピーポー
…ピーポー
…ピーポー
…バタン!
「 … どこですか ?」
…バタバタバタ
…バタバタバタ
「 … こちらです 」
…バタバタバタ
…バタバタバタ
―
動かない ゆきが 横になっている
ソファ前のテーブルの上には
ティーカップ と 薬 だけ …
「 意識はまだ ?」
「 ぇえ …」
「 自分で用意した
薬を ? 」
「 … 今朝は なぜ か
早く起きていらして …」
「 身だしなみも
整っていますね …
それで ? …」
「・・・・」
「 判らないんですか ?
では どれくらい前に
この薬を
飲んだんですか ?」
「 …スミマセン
ワタクシ キッチンに
居りまして
おそらく … その間に …」
「 … この飲み物は ?」
「 はい
" ハーブティー ” を
お飲みになりたいと
おっしゃって …」
救急救命士は ハーブティーの
茶葉を見せられた …
「 …… ハーブティー …
ですよね …
おい! 運ぶぞ …」
「 はい … 」
「 あ! の …
奥さまは 以前 も …
で… 運ばれた病院が…」
「 は? 以前も?
ですか?」
「… はい
○○病院へ …」
「… 分かりました
そちらへ運びます …」
救急救命士はその茶葉と薬を預かり
ゆきは運ばれ ……
…パタン!
…ピーポー
…ピーポー
「 … ったく!
初めてじゃない … って
自分でだろ これ …
なら! 俺たちを呼ぶなよ
もっと 必要とされてる方に
往けなかったじゃないか …」
「 … どうしたんですか ?」
「 … いや 」
救急救命士は口を堅く閉じた
…ピーポー
…ピーポー
病院に運ばれた ゆきは …
自分で 薬を飲んだ事に され …
それが それ らしく?
周りから見られるように?
すでに あの 主人によって?
これは
初めてじゃない事に され てて …
そう …
以前 貧血で倒れた と!
ゆきは信じこまされて? た?
あの時の 事も
主人の 事も?
ちゃんと?
" 事 ” を 知る?
ここは そんな 以前
ゆきが倒れた時に運ばれた病院 …
…カタカタカタ…
『 先生!
お願いします!』
ゆきは 意識が無いから
何も言えないまま で …
「 ん?
このこ ? は また? …」
「 はい …
また … みたいです…」
『 おい!
胃洗浄だ!』
…ガタガタガタ…
…ガチャガチャガチャ…
―
そう …
でも これじゃぁ …
あの主人の思い通りに?
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