2022.11.17 結婚相談所のお話 4. 再出発

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2022.11.17 結婚相談所のお話 4. 再出発

結婚すると思っていたのに破談となり、さすがにしばらくは立ち直れずにいた。 32歳になっていた。 いよいよ先がない。 母からは「完全に結婚が決まるまでは周囲に話すべきではない。なにが起こるかわからないから」と口酸っぱく言い渡されてきた。 『なにが起こるか』というのが、浮ついて言いふらしまくった結果、妬みを買って、誰かの悪意で邪魔されるとも限らないから気をつけなさい、の意味合いが強かったのだけど、まさか破談の結末となるとは……思いもよらなかった。 幸い、「結婚相談所で出会った人と結婚します」なんて言い回るほどには舞い上がってはいなかったので、職場で気まずい思いをせずに済んだ。 ただし、浮いた話ひとつ無い気の毒な人、の認定はされていたようだった。 同年代が次々とゴールインしていく。派遣社員や契約社員が次々と寿退社し、送別会が行われ、人員が入れ替わっていく。 その手の話にはなるべく触れないという周囲の生温かい気づかいが、いくら鈍感な自分でもはっきりと感じ取れるお年頃になっていた。 しんどい。 かと言って病んで闇堕ちしてても埒があかないので、別れて半年くらい経ってから業界大手で会員数の多かったツヴァイに入会して、オーネット婚活を同時進行することになった。 もうね、親がうるさかったんですよ。心配のあまりか、家にいるとめっちゃ口出しされる。早く結婚して家を出て行けと何度言われたかな。(無理なもんは無理) すこしはヤル気を見せておけば、口煩(くちうるさ)く言われなくなるかなーと期待して、一方の出会いのほうはまぁ少しは期待できるかなと思った程度だった。 なぜか、横浜では同業の会社が同じビルに入居してたんだよね。 ぶっちゃけ、あっちこっち行かずに済んだので便利かなーと思ってた。 さて、この頃になると婚活業界もPCでの閲覧ができるように、データの移行がされるようになってきていた。 だがツヴァイでは個人情報流出を恐れてか、相談所にあるPCで閲覧できるだけだったので、わざわざ事務所に足を運ばなければならなかった。 入会したての頃はどこも同じで、初っぱなから文句が出ないように配慮するらしく、会員の印象でアドバイザーが判断し、相手をみつくろってマッチングの場を提供してくれた。 こっちからお願いしなければ相手にしてもらえないので、数回連絡をよこしたら、いつのまにかフェードアウトしていくのも同じ。 アドバイザー自身も、担当する会員内で成婚するとノルマ達成で評価されるって聞いた。でもね、なんせ成婚率がアレだもん、旨い話じゃないんだよね。若い人の力になれる!なんて希望を持って仕事に臨んでも会員7割があんな感じで、それじゃダメですよなんて個人にアドバイスしても報われない。アドバイザーの入れ替わり激しいんだよ……自分より若い人がアドバイザーになったり、年配の朗らか 仲人(なこうど)風おばさんだったり、さまざまだったけど気がついたら辞めてる。で、いま誰が自分の担当なのかもわからなくなるんだよね。 そんなこんなで担当アドバイザーがマッチングしてくれて、仕切り壁(パーティション)のある会員用の部屋で初めて会った人は年上だった。 けど、相手はこちらにまったく興味がないようで、自分の活動について饒舌に語ってくれた。 すっかり、取材現場で対象の聞き役を全うするレポーターのお仕事と化していた。 そして相手(コヤツ)はなんと!!! ついこのあいだの話なんだけど、と語り始めた。 なんでもPCの閲覧中に、とてもきれいで可愛い、好みの女性がヒットしたので、周囲の目を盗んで、ケータイのカメラで個人情報そのままをこっそり撮影して保存してある、と白状しやがった。 は————————ぁあ あ あ゛あ゛???!?!?!?!!!! 彼女がどんなに家庭的で、自分の好みか、私に盛大にぶちまけておったが、そんなこたァどぉおーーーーーだっていーんだよッ!!!!!! 規約違反!!!!! 馬なの? 鹿なの?? あのね私はね、そりゃ結婚相談所は初めてじゃ無い。だから知ってる。 活動期間自体は長いし、いろんな人がいるのも実際に会ってきたから、いろんな人に当たるのも知ってるよ。 けどさ、一応ここの会員になって、アナタが初めて会う人だったわけ。 だから、ねぇ……。(嘆息) ダメじゃん????? 全員がダメじゃ無いのはわかってるけど、思いっきり出鼻をくじかれた気分になったのは間違いない。 期待がしおしおと、乾燥して(しお)れていくのを感じた。 すっかりヤル気を失って、そっちでの活動は適当に放っておいた。 高い入会金払ったのにね。 その後はアドバイザーからも連絡がなかったし、年齢的に引っかかるデータもなかったようで大した紹介もなく、ほかの会員と会った記憶もない。 なんだったんだろうね、ホント。 続く。
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