2.転がり込んだからしょうがない。

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「きゃあっ!」  愛莉は反射的に悲鳴を上げ後退し、ドアに背中をぶつけた。  キョウヘイは黒の革靴を脱いだ先にしゃがむと、ハッハと舌を出して甘える動物を抱き上げた。 「よーしよし、あずき、ただいまな〜」  あずきと呼ばれたチワワは返事をするように「わん!」とまた一吠えする。  うさぎと変わらないくらいの大きさだが、愛莉は玄関扉にくっついたまま動かない。 「なんだ、お前、犬苦手なのか?」 「お、お前じゃない、園田愛莉!」  あずきを撫でながら振り向くキョウヘイに、顔を顰めながらもしっかり名前を告げる愛莉。  もしかしたら同棲している彼女の一人でもいるかもしれないと思ったが、ペットがいるとは予想外だった。 「犬が苦手っていうか、動物……生き物全般苦手なの!」 「ふーん。んじゃ今からペットがいない婦人警官か警察署」 「あーっ、やだ! ここにいるっ!」  鍵が入っていたのとは別のポケットからスマートフォンを取り出すキョウヘイに、愛莉は急いで待ったをかける。  それから仕方なくスニーカーを脱ぐと、部屋に一歩足を踏み入れた。  その瞬間「わんっ! わわわわわん!」と怒涛の威嚇を浴びせられ、愛莉の身体がビクッと跳ねる。  ――やっぱり可愛くない。  愛莉はあからさまに嫌な顔をしてあずき色の犬を睨みつけた。  吠えたり鳴いたり、かと思ったら尻尾を揺らして愛想を振り撒く、そんなイメージのある犬は、動物の中でも特に苦手なのだ。
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