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その後、平に言われた通り、愛莉は今までと変わらず別の布団に収まった。
畳に距離を取って並べられた二組。
冷え込みに合わせて羽毛布団が出されている。
もこもこした寝具に埋もれるようにして、すやすや寝息を立てる愛莉。
その隣にいた平は、身体は疲れているはずなのにちっとも眠気がやってこなかった。
暗がりの中、敷布団の上にあぐらをかく平の手元が、ぼんやりとした光を纏う。
今の時代、簡単に調べられる手段がある。
それを知っていれば、やらずにはいられないだろう。
気になるキーワードを打ち込む。『疲れやすい』や『初潮がない』などから弾き出された画面に人差し指を滑らせる。
大したことがない結果の方が多いはずなのに、目はなぜか悪い方ばかり追ってしまう。
生まれつきの疾患や重篤な病。
その詳細を確かめては症状の違いを探す。
――こんなことしたって、どうしようもねえ。
平は一つ息をつくと、検査をしてくれそうな病院を見つけて電源を落とした。
余計なことを考えないように、暗転したシルバーのスマートフォンが床に投げ出される。
少し離れた横で気持ちよさそうに眠る愛莉。
頬にかかる髪を手の甲で撫でるように避けると、現れた白い肌に唇を落とす。
なにがあってもこの安らかな表情を守ると誓いながら。
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