4.動き出したんだからしょうがない。

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 愛莉は平に言われた通り、家を出てすぐ右に曲がった道を素直に歩く。犬のリードを引くのは初めてだったが、あずきが軽いため重心を持っていかれることもなく、思ったよりスムーズだった。  今日は土曜日のため学生の姿はなく、代わりに子連れの家族が多い。  しかしそんなことは学校に行っていない愛莉にも、刑事である平にも関係のないことだ。  戸建やマンションにアパート、今風の小洒落たデザインから古めかしい作りが入り混じった住宅街を行くと、十分と経たないうちにスーパーが見えてくる。  愛莉はあずきを歩かせたまま、白地に青い文字の店名が掲げられた建物に入っていった。  初めて来たスーパーのため配置がわからず、愛莉はキョロキョロしながら店内をうろつく。  ――千円、千円で買えるもの。  平は愛莉の分の朝昼晩ご飯代だと言っていたが、本人はそんなに必要ないと思っていた。  何日も食べられなかった時のことを思えば、一日一食でもありがたいくらいだ。  お弁当やパンなどを買えばすぐに飛んでゆくであろう紙切れ。どうせなら平と一緒に食べられるものにしたいと愛莉は考えた。  出来合いのものは量が少ない割に値段が高い。これではあの逞しそうな身体を満たせないだろうと、愛莉は悩んだ末料理をすることにした。  カレーくらいしか思いつかなかったため、惣菜から野菜コーナーに移る。  にんじん、じゃがいも、玉ねぎにルー、どれも一番安いものを選び買い物カゴに入れる。  牛肉の高値を見て過去の手癖の悪さが出そうになるが、平の顔を思い出し堪えると、その隣にある小さなパックに入った鶏肉で我慢した。
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