1.出会ってしまったんだからしょうがない。

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 愛莉はひどく居心地が悪くなる。  自分もなにか問いただされるのではないかと思ったからだ。  ホテルの前に停車したパトカー、そこから現れた数人の私服警官に、中年男性は連行されていく。  同じ並びの建物から出てきた男女が、物々しい光景にちらほらと足を止めた。  先ほどの青年はパトカーのそばに立つ年配警官にことの経緯(いきさつ)を説明しているようだった。その肘にはまだ袋がぶら下がっている。  男から解放されたキョウヘイは、背広のポケットに手を入れホテルの出入り口前に立ち止まっていた。  愛莉はそんな彼の隣で待機しながら、少し遠巻きに一部始終を傍観していた。   「さーてと、お嬢ちゃん」  愛莉の身体に力がこもる。  ――やっぱり来た。  不自然なのは百も承知の上だ。 「あの男とどういう関係かな?」 「……恋人」  まさか警察官に適当に夜の街で引っかけた男です、とは言えない。  大人ならただのお遊びでごまかせたかもしれないが、愛莉の年齢を考えればこれくらいの言い訳しか思いつかなかった。 「ほう、じゃあ彼氏の名前、年齢、職業言ってくれるか?」  早速「うっ」と言葉に詰まる愛莉。  その場凌ぎの嘘など、つくだけ苦しくなるだけだ。 「あいつ、たぶん殺人犯」  横から振ってきたとんでもないセリフに、愛莉は思わず顔を上げた。  目が合ったキョウヘイは、少し困ったように片眉を下げ微笑していた。
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