1.出会ってしまったんだからしょうがない。

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「なにやってるんですか?」 「おう、マメタ、それがよう」  キョウヘイはマメタと呼んだ部下らしき彼に、愛莉の言うことを伝えた。 「別にいいんじゃないですか?」  くりくりした目で答えるマメタに、キョウヘイは思わず吹き出しそうになった。なにも口に入っていないのに。 「いや、よくはねーだろ、俺は一応男でだな」 「未成年を保護するって意味では一番安心だと思いますけどね、キョウヘイさんなら間違い起こすはずないですし」  マメタの発言にキョウヘイはあんぐりとし、愛莉は「ナイス」と言わんばかりに強く頷いた。 「怖い思いしたみたいだし、優しくしてあげなきゃあ」 「そうなの……思い出すと、すごく怖くて」  愛莉は今にも泣きそうな表情を浮かべ、両手のひらで顔を覆った。  しかしその手の内では、微笑しながら横目にキョウヘイを見上げている。   とても先ほどまで命の危機に瀕していた人物だとは思えない。  すっかり騙されているマメタは「大丈夫?」と気遣う言葉をかけるが、バッチリ目が合っているキョウヘイは口の端を引き攣らせた。  キョウヘイの言葉によって愛莉は悲劇のヒロインと化している。今更自分が言ったことを撤回するわけにもいかず、野放しにするには危なすぎる。  さまざまなことを考慮した上で、キョウヘイは愛莉の希望を聞くことにした。 「あー、もう、わかった、今夜だけだからな」  ガシガシと頭を掻きながら渋々了承するキョウヘイに、愛莉はにんまり目を細めた。   「あとのことは僕に任せて、キョウヘイさんはもう上がってください。僕運転するんで」 「へいへい」  現場から歩いて五、六分離れた場所に待機されていたパトカーではない黒一色の乗用車。  運転席にマメタが腰を据え、その後部座席にキョウヘイと愛莉が肩を並べて乗り込んだ。
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