2.転がり込んだからしょうがない。

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2.転がり込んだからしょうがない。

 マメタが車を運転している間、愛莉は隣に座るキョウヘイをチラッと盗み見る。  気だるそうに座席に体重を預けた彼の太ももに投げ出された左手。その薬指に輪っかがついていないことを確認した愛莉はふふっと微笑む。  ――結婚、してないみたい?  稀に職業柄や個人のこだわりから結婚指輪をはめない人もいるが、限りなく独身に近い可能性を知った愛莉は気分が上がった。  にやにやする隣人に気づいたキョウヘイが「なんだぁ?」と不審そうに尋ねるが、愛莉は何食わぬ顔で「別に〜」と返すだけだった。  新宿から車で約三十分、東京の都心部から少し距離のある住宅街に到着する。  先ほどの繁華街とは違い店もなければ明かりもない。住民たちも寝静まっている深夜の道を照らすのはLEDの青白い街灯だけだ。  二階建てのクリーム色を基調にした、三角屋根のアパート。今風のおしゃれな作りではなく、一見しただけで築年数が古いのがわかる。  その建物の横につけるように車が停まると、キョウヘイがドアを開け外へ出たので愛莉も同じようにした。   「じゃあキョウヘイさん、また明日……じゃなくて今日か」 「おう、また数時間後にな」  ひらひら手を振るキョウヘイに、マメタはハンドルを握ったまま軽く頭を下げた。  別れの挨拶が済むと、再び車が動き出し、その場には愛莉とキョウヘイだけが残された。
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