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子分を四匹連れ、さらに二丁目への道を進む。しばらく行くと、またしても電柱の陰から、四天王の一角、巨漢のサバトラが現れた。『肉襦袢のデーブ』だ。そいつの背後には、優に百匹を超えるこの町の猫たちがずらっと並んでいる。
「ニャーゴ(大将、すべての兵隊を集めてきたで。うちが負ける要素はありませんで)」
デーブが言うと、並んでいる猫たちが揃って鳴き声を上げた。まるでカエルの合唱だ。てやんでえ、この馬鹿野郎どもが。死ぬかも知れねえ戦に来てくれて、ありがとうよ。
「ナアーン!(よし、てめえらの命はオレが預かる! 地獄の果てまでついて来い!)」
心が熱せられたように燃え上がった。感動してる場合じゃねえが、この町は大いなる絆で結ばれているのだと確信し、背中を押された気分だった。必ず勝てる。いくらか犠牲は出るだろうが、オレは大将、こいつらを全員守り抜いてみせらあ。
犬ッころ一匹と、四天王、百匹を超える猫たちを連れ、一つの軍隊を引っ張るオレは堂々と道を歩いた。あの黒猫がどれほど強大であろうと勝利以外の結果はねえと思った。胸の中には錦の御旗がある。さあ、前へ、前へ、突き進むのだ!
途中で、オレと並行して歩くタドコロユカが、愉快そうに笑った。
「茶太郎ってすごいボスなんだね。こんな大行列を動画で上げたら、どれだけ反響があるか分からないよ。そんな大行列の中に私がいる。今、私はとても興奮しているよ」
ドウガって何か分からねえが、そりゃあ他人が見りゃあ圧巻だろうさ。オレたち猫は基本的に群れでは動かねえ。こんだけ集まって、一つの目的に足並みを揃えることはねえんだ。逆を言えば、この町がそれだけいい町だってことだ。皆がここを守りたい。余所者の黒猫風情に蹂躙されるのは我慢ならねえってこった。
「私は、茶太郎に敬意を持ったよ。絶対に勝って帰ろうね。そして、あの黒猫に憑いたものも祓うんだ。大団円で終われるように、みんなで全力を尽くそうね」
オレは大地を蹴り、タドコロユカの肩にひょいと飛び乗った。そして、声の限りに、空へ向かって大きく吼えた。
「ナーオッ!(勝利は我らにあり! 皆の者、オレに続けえッ!)」
子分たちが勢いつけて呼応した。我が軍の士気は最高レベルに上がっている。すでに火蓋は切られた。やがてオレたちは、ニャアニャア奮ったまま、二丁目の空地へ到着した。
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