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「……蒼司はオレのこと、同い年なのにいつまでそうやってガキ扱いするんだよ?」
拗ねた子どものようなお決まりの台詞を呟き、陽翔は嫌そうに蒼司の大きな手を振り払う。
そうでもしないと、乱れ狂う感情におかしい名が今にもついてしまいそうな予感がした。
今はまだ、その感情に名をつけてはいけないと第六感が訴える。だいたいこういう感覚は、後々当たるのだ。
「仕方ないだろう? 陽翔がいつまでたってもしっかりしないから、俺が傍にいてずっと面倒みないと」
振り払ったはずの手を、逆に陽翔は掴まれてしまう。
強い力だ。
どきっとした。
「な、なんだよ……?」
動揺を悟られたくなくて平然としたふりを試みたが、語尾が微かに震えてしまう。
「:--なんだよ、じゃないだろう?」
ぎゅうと手を掴んだままの蒼司は、眉間に大きく皺を寄せ怪訝そうな顔をした。
次の瞬間、陽翔を自身の胸へぐいと強く引き寄せる。
……え、っ?
な、なに?
なにが、起きたのだろうか。
咄嗟に陽翔は、今の自分に起きたことが理解できなかった。
なすがまま身を任せていると、男にしては細身の陽翔の身体を、ぎゅうと全身が軋むほどに抱きしめられる。
開襟シャツの上からでもわかる厚く硬質な筋肉のついた胸板、隣りにいた時は細く見えていたはずの両腕が本当は雄々しいこと。
途端、蒼司が知らない大人の男に思えた。
隣りにいることで、陽翔は蒼司の全てを知っているつもりだったが、それは自惚れだったことを知る。
ガキ扱いするなよ、なんて言ってしまったばかりだったが、身体の成長も成績もいつも陽翔の少しばかり先を行く真面目で賢い幼馴染の蒼司には、この差がずっと前から見えていたのかもしれない。
北国の小さな街に、偶然、同じ年に生まれたたった二人きりの同級生である陽翔と蒼司。
小学校も中学校も、また街に高校はなく二人揃って当然のように入学した帯広の高校でも一緒だった。新しい環境下、互いにそれぞれ特別な親友を作ることができたはずなのに、離れようともしなかったのだ。
少なくとも陽翔はこのところずっと、蒼司に心乱されていたというのに。
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