513人が本棚に入れています
本棚に追加
「未知ファンクラブの会員で卯月上総という男がいる。嫁と孫にとにかくメロメロで、息子同様姐さんの写真を財布に入れ常に持ち歩いている筋金入りの姐さんラブの男だ。彼が当時の事件を覚えていた。加害者とされた女のアパートからもうひとり、身元不明の男児が発見され保護された。これは警察しか知らない」
「当時上総は野暮用で福島に二週間くらい滞在していたそうだ。事件があった日、たまたま偶然近くを通り掛かり、野次馬にまじり見ていたそうだ」
「野暮用?」
「つまりカミさんに隠れてこれと旅行だ」
小指を立てた。
「イロ、つまり愛人のことだ。上総さんも和彦同様若い頃は女性にモテモテだったんだ」
ヤスさんがこっそり教えてくれた。
「上総はかなりやんちゃで女と遊び呆けていたが、姐さんが嫁に来てから180度変わった。心を入れ替えて全うな大人になった」
「やっぱり未知さんってすごい」
「俺にとって姐さんは娘みたいなものだ。姐さんの話しばかりしていると、伊澤にしょっちゅう焼きもちを妬かれる。困ったもんだな」
根岸さんが頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!