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三十年前の事件
三十年前の事件が起きたアパートは、ながはらレディースクリニックの近くだと根岸さんから教えてもらい、ヤスさんと周辺を聞いて歩いたけど、三十年前に起きた事件を覚えているひとは誰もいなかった。
四車線の幹線道路沿いには大きなスーパーやドラックストアー。コンビニエンスストアやクリニック。それに真新しいアパートがいくつも建ち並んでいた。ヤスさんに車椅子を押してもらい狭い脇道を奥に進むと、昔ながらの田園風景が広がっていた。
コンビニエンスストアの店員さんから昔からここ一帯で大きな農家をしている早水さんという男性を紹介してもらった。
「ちょうどするすをしているところだ」
「するす?」
「籾摺りのことだ」
何回か声を掛けたけど、機械の音でかき消されてしまった。出直して来ようとヤスさんと話しをしていたら、
「おめさんか?昔の事件を聞き回っているのは」
腰の曲がったお婆ちゃんに声を掛けられた。
「はい。そのとき赤ちゃんだったのが、主人なんです」
「そうか。ここじゃあ、いらっぽくなっぺした。あっちさいくか」
倉庫の隣に建つ大きな二階建ての自宅に案内してくれた。
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