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「三十二年前に近くさ新しく小学校が出来て、田んぼを潰してどんどんと家が建つようになったんだ。事件があったアパートはすぐ近くさあった。消防車やパトカーや救急車が道を埋め尽くすくらいぎょうさん来てえらい騒ぎだったんだ」
「どんな人が住んでいたか覚えてませんよね?」
「若い夫婦と大学生が住んでましたよ。どうぞ」
お嫁さんかな?お茶を運んできてくれた。
「お忙しいときに押し掛けてしまいすみません」
下げられるところまで頭を下げたら、
「お腹に赤ちゃんがいるんでしょう?お腹を圧迫しないほうがいいわよ」
「え?なんでそのことを……」
驚いて顔を上げたら、
「なんとなくね。うちのお嫁さんも妊娠中だから」
だから分かったんだ。納得することが出来た。
「妊娠届けを行政センターに出したら赤ちゃんいますのピンクのストラップをもらえるから車イスとバック、なるべく目立つところに付けた方がいいよ」
「はい」
お嫁さんだと思っていた人は、お婆ちゃんの娘さんだった。籾摺りをしているのはご主人と息子さんだった。息子さんを出産し病院から自宅に帰ってきた日にあの事件に遭遇し、規制線が張られすぐ目の前に自宅があったにも関わらず夕方まで家に帰れなかったと当時のことを話してくれた。
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