三十年前の事件

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ヤスさんの声はよく通る。 何事かとお爺ちゃんとお婆ちゃんが駆け付けてくれた。 「今日もね無言電話が何十件とあったのよ。町内会からも不審者がいるので気を付けてくださいって回覧板が回ってきたわ。誤解しないでね、決してヤスさんのことではないから」 「分かってますよ」 「しかしまぁ、物騒な世の中になったもんだ」 そのあと、ヤスさんを交え、お爺ちゃんとお婆ちゃんと家族会議を行った。 円花が目を覚まし僕を取られると思ったのか、心春はコアラのように僕の体にしがみつき全然離れなかった。 「引っ越しは明日。オヤジがレンタカーを手配してくれた。それと力自慢の若い衆が助っ人に来ることになった」 卯月さんとメールでやり取りしていたヤスさんが彼に伝えると、 「ヤスさんすみません。仕事があって」 「俺がいる。心配するな」 「ありがとうございます」 「あとで駐車場の場所を教える。もしかしたらかなり歩くことになるが大丈夫か?」 「はい。歩くのは好きなので苦になりません」 「良かった。じゃあ決まりな」 ヤスさんがあっという間に話しを纏めてしまった。さすがだ。 ナオさん家族が先週まで使っていた部屋をそのまま借りることになった。 「お友達がたくさんいるよ。いっぱい遊んでもらえるね」 うん、ようやく心春に笑顔が戻った。
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