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一発は銃を持つ手を掠め、もう一発は足に命中した。
「城、てめぇーー!」
若井さんが怒鳴り声を上げた。
「残念ながら一発は俺じゃない。さすがは伝説の殺し屋だ。全然腕が鈍っていない。若井、菱沼組を敵に回した時点で終わってんだよ」
背後から城さんが颯爽と現れると、足元に落ちていた拳銃を拾い上げた。
「若井、暴発しなくて良かったな。柚原に頼んでちょいと細工してもらったんだ」
「うるせぇーー!黙れ!」
「お前の心配はしていない。俺ら警察の仕事は一般市民を守ることだからな」
男の子が若井さんの手から離れたその一瞬を卯月さんは見逃さなかった。
「いまだ!若井を取り押さえろ!」
卯月さんの掛け声に一斉に警察官が若井さんに飛びかかった。
男の子は警察官ではなく、なぜか卯月さんのところに真っ直ぐ走っていくと、長い脚にぎゅっとしがみついた。
「よく、頑張ったな。偉いぞ」
卯月さんは片膝を立てて座ると、泣きじゃくる男の子の頭を撫でて、笑顔で覗き込んだ。
「警察官に誘拐され怖い思いをしたんだ。当然と言えば当然だな」
蜂谷さんがぼそりと呟いた。
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