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ゆっくりと呼吸をしてから通話ボタンを押した。
ーなかなか電話に出ないから心配したー
電話を掛けてきたのは櫂さんだった。
「あのすみません和真さんは……」
ー用事があったのは和真くんじゃなくて、四季くんのほうだから。結が会いたがっているんだ。一度うちに遊びに来ない?ー
「あ、でも……」
ー家まで迎えに行くよ。すっかり言い忘れたけど、この番号は結の新しい携帯番号なんだ。紬のお世話で手が離せないみたいだから代わりに僕が掛けたんだー
「やっぱりそうだったんですね。あの、櫂さん、実は明日引っ越すことになって」
ーえ?そうなの?ずいぶんと急だね。どこに引っ越すの?ー
「紬ちゃんが産まれるまで結お姉さんが身を寄せていた菱沼ビルディグにです」
ー …… ー
櫂さんが急に黙り込んでしまった。
「あ、でも、安定期に入るまでです。初めての妊娠だし、分からないことだらけだから、ベテランママさんや先輩ママさんに色々教えてもらおうかってそう思って。あの、櫂さん?」
気付いた時には電話が切れていた。
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