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──後日、某所。
「いてててて……もっと優しく巻いてくれよ」
「窓ガラスで切った傷だけですんでラッキーなんだから、我慢」
結果、あの銃弾は……奇跡的に当たった。
その後、混乱に乗じて逃げ……ミオは今、俺の店にいる。
熱心に包帯を変えてくれるミオを見ながら、クスリと笑ってしまう。
ミオはあの夜より、ますます──人間らしい顔をするようになったと思う。
「おーいロリコン元気か」
「誰がロリコンだ誰が」
やってきたのは事の発端こと、旧友だ。
見舞いと言いつつ、持ってきた食い物の8割を自分で平らげていく奴である。
今日持ってきたフルーツバスケットも、きっとそうなる運命だろう。
先手必勝とばかりにリンゴを手に取ると、おまけに下から、紙切れが出てきた。
旧友に聞いても、首を傾げるばかりだ。
開いてみると、それは手紙のようだった。
「“人魚を助けてくれてありがとう。君を選んでよかった。”……って、もしかして……」
抱いていた違和感や疑問が、頭の中で綺麗に繋がった。
「最初っから仕組まれてたってことか⁉︎」
ミオが、気まずそうに頬を掻いている。
(お前もグルか…)
旧友を睨みつけるが、彼は呑気にバナナを齧っていた。
「オレは関係ないぞ」
「いいように使われただけってことな……」
それはそれでどうなんだ……こいつが未だ、裏稼業で五体満足で生きているのが不思議でしょうがない。
「──さて」
バナナを平らげた旧友が、机に腰掛ける。
「可愛こちゃんも増えたんだ。店の名前、変えてもいいんじゃねーの?」
「‼︎」
ミオは目を輝かせて、いかにも期待いっぱいといった様子だ。
こんな顔されたら断れないのを、わかってて言い出しやがったのは十二分にわかっている。
「わかったよ。じゃあ今日からこの店は──」
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