Flying sea ー空飛ぶ海ー

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「子供……? この家の子供か?」  少女は首を横に振る。 「ならなんで…こんな所にいるんだ?今夜は怖い人達が沢山来てて、すっごく危険なんだぞ」 「知ってる」 「は?」  少女は、何でもないように言ってのけた。 「私が標的だから」 (いやいやいや何を言ってるんだ?)  この子供が標的? なんで? ていうか、普通に考えて嘘か……そうだ嘘だよな。 「すまないが、悪い冗談は嫌いなんだ」  少女は微かに眉間に皺を寄せ、俺の手を握って──自分の頭に向かって、引き金を引いた。 「え、お……おい……?」  硝煙の臭いと、鉄臭さが鼻をつく。  銃弾は見事に脳天にぶち込まれた──少女は、生きてはいないだろう。  それでも、年端もいかない子供を殺してしまったなんて信じたくなくて、声をかけ続けた。  1分ほど経ったか。  少女の体が、むくりと起き上がった。 「え……」  その顔にも頭にも、どこにも傷跡はなく、少女は慣れた手つきで、乱れた髪を直している。  やがて気が済んだのか手を下ろし、少女はもう一度、言った。 「私が標的なの。……誰も殺せない標的」
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